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THEMISはチロシンホスファターゼSHP1の活性を阻害することによりCD4+CD8+胸腺細胞におけるTCRシグナル伝達を増加させる

THEMIS increases TCR signaling in CD4+CD8+ thymocytes by inhibiting the activity of the tyrosine phosphatase SHP1

Research Article

SCIENCE SIGNALING
9 May 2023 Vol 16, Issue 784
[DOI: 10.1126/scisignal.ade1274]

Seeyoung Choi1, Jan Lee1, Teri Hatzihristidis1, Guillaume Gaud1, Avik Dutta1, Awadhesh Arya1, 2, Lauren M. Clubb1, Daniel B. Stamos1, Adrienn Markovics3, Katalin Mikecz3, Paul E. Love1, *

  1. 1 Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.
  2. 2 Shock, Trauma and Anesthesiology Research (STAR) Center, University of Maryland, School of Medicine, Baltimore, MD 21201, USA.
  3. 3 Department of Orthopedic Surgery, Rush University Medical Center, Chicago, IL 60612, USA.

* Corresponding author. Email: lovep@mail.nih.gov

THEMISは胸腺細胞のSHP1をシャットダウンする

胸腺では、CD4およびCD8ダブルポジティブ(DP)胸腺細胞が、T細胞受容体(TCR)を刺激する自己ペプチドリガンドに曝されることで、その運命が決定される。不十分なTCRシグナル伝達はネグレクトによる死につながり、過剰なシグナル伝達は、自己反応性細胞を除去するアポトーシスによる死をもたらす。そして、十分なシグナル伝達は、胸腺細胞からCD4またはCD8シングルポジティブT細胞への正の選択を可能にする。タンパク質THEMISを欠くマウスは、胸腺細胞の正の選択の失敗を示す。Choiらは、阻害性チロシンホスファターゼSHP1のノックアウトにより、Themisノックアウトマウスのこの欠陥が元に戻ることを示した。THEMISがSHP1活性を阻害するモデルと一致して、SHP1の過剰発現はTHEMISの欠失の影響を表現型模写した。さらに、DP胸腺細胞の負の選択は、THEMISの非存在下では損なわれた。合わせると、これらの知見はTHEMISがDP胸腺細胞のSHP1を阻害して、自己ペプチドによるTCR刺激に対する感受性を高めることを示唆している。—JFF

要約

T細胞系統限定タンパク質THEMISは、正の選択段階でのT細胞の発生において重要な役割を果たす。SHP1活性化モデルでは、THEMISはチロシンホスファターゼSHP1(Ptpn6によってコードされる)の活性を増強し、それによりT細胞抗原受容体(TCR)シグナル伝達を弱め、正に選択されるリガンドによるCD4+CD8+胸腺細胞の不適切な負の選択を妨げると提唱されている。対照的に、SHP1阻害モデルでは、THEMISはSHP1の活性を抑制し、CD4+CD8+胸腺細胞の低親和性リガンドによって開始されるTCRシグナル伝達に対する感受性を高め、正の選択を促進すると考えられている。われわれは、THEMISの分子機能に関する論争の解決を目指した。われわれは、Themis−/−胸腺細胞における正の選択の欠陥が、SHP1の薬理学的阻害またはPtpn6の欠失によって改善され、SHP1の過剰発現によって悪化することを見出した。さらに、SHP1の過剰発現はThemis−/−の発生異常の表現型を模倣したが、Ptpn6Ptpn11(SHP2をコードする)、またはその両方の欠失はThemis欠損に似た表現型をもたらさなかった。最後に、THEMISが存在しない場合、胸腺細胞の負の選択は強化されず、むしろ損なわれることを発見した。まとめると、これらの結果は、SHP1阻害モデルを支持する証拠を提供し、THEMISがTCRシグナル伝達に対するCD4+CD8+胸腺細胞の感受性を高めるように機能し、低親和性自己リガンドとTCRの相互作用による正の選択を可能にする機構を裏付けるものである。

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