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ハムスターモデルにおいてSARS-CoV-2の気道感染は体性感覚異常の発生につながる

SARS-CoV-2 airway infection results in the development of somatosensory abnormalities in a hamster model

Research Article

SCIENCE SIGNALING
9 May 2023 Vol 16, Issue 784
[DOI: 10.1126/scisignal.ade4984]

Randal A. Serafini1, †, Justin J. Frere2, 3, †, Jeffrey Zimering1, 4, Ilinca M. Giosan1, Kerri D. Pryce1,

Ilona Golynker3, Maryline Panis3, Anne Ruiz1, Benjamin R. tenOever3, *, Venetia Zachariou1, 5, 6, *

  1. 1 Nash Department of Neuroscience and Friedman Brain Institute, Icahn School of
    Medicine at Mount Sinai, New York, NY 10029, USA.
  2. 2 Department of Microbiology, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY 10029, USA.
  3. 3 Department of Microbiology, New York University Grossman School of Medicine, New York, NY
    10016, USA.
  4. 4 Department of Neurosurgery, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY 10029, USA.
  5. 5 Department of Pharmacological Sciences, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY 10029, USA.
  6. 6 Department of Pharmacology, Physiology and Biophysics, Boston University Chobanian
    and Avedisian School of Medicine, Boston, MA 02118, USA.

* Corresponding author. Email: benjamin.tenoever@nyulangone.org (B.T.); vzachar@bu.edu (V.Z.)

† These authors contributed equally to this work.

ロングCOVIDの痛み

COVID-19を引き起こすウイルスであるSARS-CoV-2の感染者の中には、感染症の回復後に、全身の疼痛、神経障害、筋肉痛を含む神経系の障害などの、さまざまな症状を経験する人もいる。Serafiniらは、SARS-CoV-2を鼻腔内感染させたハムスターの後根神経節において非感染性のウイルスRNAが検出可能であることを見出した。この現象は感覚神経における持続的な遺伝子発現シグネチャーと関連しており、そのシグネチャーは、炎症性および損傷誘発性神経障害性疼痛マウスモデルと部分的に類似したが、インフルエンザウイルス感染マウスとは異なった。これらの知見により、ロングCOVIDやその他のニューロパチーに伴う疼痛を治療するための、サイトカイン関連因子ILF3などの治療標的候補がさらに同定されている。—LKF

要約

SARS-CoV-2感染は、大部分が気道に限局するが、急性と慢性の両方の表現型で現れる感覚異常に関連している。これらの感覚異常の分子的基盤に関する洞察を得るために、われわれはゴールデンハムスターモデルを用いて、SARS-CoV-2とインフルエンザAウイルス(IAV)の感染が感覚神経系に及ぼす影響の特徴を明らかにし、比較した。鼻腔内ウイルス感染後最初の24時間以内に、頸髄および胸髄と後根神経節(DRG)でSARS-CoV-2転写物が検出されたが、感染性物質は検出されなかった。SARS-CoV-2感染ハムスターでは、IAV感染ハムスターと比較して軽度であるが長期にわたる機械的過敏症が認められた。感染1〜4日後の胸髄DRGのRNAシークエンシング解析により、SARS-CoV-2感染動物では主に神経シグナル伝達が障害されるのに対し、IAV感染動物ではI型インターフェロンシグナル伝達が障害されることが示唆された。その後、感染31日後には、SARS-CoV-2感染動物の胸髄DRGに神経障害性のトランスクリプトームが出現し、これはSARS-CoV-2特異的な機械的過敏症と一致した。これらのデータから疼痛管理のための標的候補が明らかになり、その1つであるRNA結合タンパク質ILF3はマウス疼痛モデルで検証された。本研究は、短期的および長期的な感覚異常の基礎にある可能性のある、SARS-CoV-2によって引き起こされるDRG内のトランスクリプトームシグネチャーを明らかにしている。

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