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アストロサイトエンドフィートにおけるSUR1-TRPM4およびNCX1を介したカチオンの流束は、AQP4を介した水の流入と虚血性脳卒中後の脳腫脹を誘導する

Cation flux through SUR1-TRPM4 and NCX1 in astrocyte endfeet induces water influx through AQP4 and brain swelling after ischemic stroke

Research Article

SCIENCE SIGNALING
6 Jun 2023 Vol 16, Issue 788
[DOI: 10.1126/scisignal.add6364]

Jesse A. Stokum1, †, Bosung Shim1, †, Serban Negoita1, Natalya Tsymbalyuk1, Orest Tsymbalyuk1, Svetlana Ivanova1, Kaspar Keledjian1, Joseph Bryan2, Mordecai P. Blaustein3, Ruchira M. Jha4, Kristopher T. Kahle5, Volodymyr Gerzanich1, J. Marc Simard1, 3, 6, *

  1. 1 Department of Neurosurgery, University of Maryland School of Medicine, Baltimore, MD 21201, USA.
  2. 2 Pacific Northwest Diabetes Research Institute, Seattle, WA 98122, USA.
  3. 3 Department of Physiology, University of Maryland School of Medicine, Baltimore, MD 21201, USA.
  4. 4 Department of Neurology, Barrow Neurological Institute and St. Joseph's Hospital and Medical Center, Phoenix, AZ 85013, USA.
  5. 5 Department of Neurosurgery, Massachusetts General Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA 02114, USA.
  6. 6 Department of Pathology, University of Maryland School of Medicine, Baltimore, MD 21201, USA.

* Corresponding author. Email: msimard@som.umaryland.edu

† These authors contributed equally to this work.

Editor's summary

脳卒中後に多く認められる脳浮腫(体液貯留に起因する脳の腫脹)は、認知機能障害と身体的障害を引き起こし、さらには死さえもたらす可能性がある。血管周囲のアストロサイトにおいてAQP4チャネルを介して水が取り込まれ、その結果として血管の圧迫と脳浮腫が生じる。Stokumらはマウスを用いて、アストロサイトへの水の流入および虚血性脳卒中後の脳腫脹に寄与している、アストロサイトエンドフィート(脳血管を取り囲んでいる細胞の突起構造)における機構を検討した。その結果、AQP4チャネルの細胞膜への急性移行を誘導する、カチオン依存性のカスケードを同定した。このカスケードを遮断したところ、脳腫脹が軽減され、脳卒中からの機能回復が改善した。—Leslie K. Ferrarelli

要約

脳腫脹は種々の脳損傷および疾患において罹病および死亡を引き起こすが、その効果的な治療法はない。脳腫脹は、アクアポリンと呼ばれるチャネルを介した、血管周囲アストロサイトへの水の流入と関連している。アストロサイトにおける水の貯留はその容積を増加させ、脳腫脹に寄与する。そこでわれわれは、重症虚血性脳卒中のマウスモデルを用いて、脳の毛細血管を完全に取り囲んでいる血管周囲のアストロサイトエンドフィートにおいて、アクアポリン4(AQP4)の細胞表面への局在化を促進している、標的となりうる機構を同定した。脳虚血は血管周囲アストロサイトのエンドフィートにおいて、ヘテロマー型カチオンチャネルであるSUR1-TRPM4およびNa+/Ca2+交換輸送体NCX1の存在量を増加させた。SUR1-TRPM4を介したNa+の流入は、逆行モードで動作するNCX1を介して細胞内へのCa2+輸送を誘導し、それによってエンドフィート内のCa2+濃度を上昇させた。このようなCa2+増加は、カルモジュリン依存性の細胞膜へのAQP4移行および水の流入を促進し、これが細胞の浮腫および脳腫脹をもたらした。マウスでは、SUR1-TRPM4またはNCX1の薬理学的阻害またはアストロサイト特異的欠失により脳腫脹が軽減し、神経学的機能が改善した。この影響の程度はAQP4阻害薬と同様であり、梗塞サイズには依存していなかった。このようにアストロサイトエンドフィートのチャネルは、脳卒中患者における虚血後脳腫脹を軽減するための標的になる可能性がある。

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