アレスチンが待ち構える

Arrestins lie in wait

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
6 Jun 2023 Vol 16, Issue 788
[DOI: 10.1126/scisignal.adj0071]

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: jfoley@aaas.org

J. Grimes, Z. Koszegi, Y. Lanoiselée, T. Miljus, S. L. O'Brien, T. M. Stepniewski, B. Medel-Lacruz, M. Baidya, M. Makarova, R. Mistry, J. Goulding, J. Drube, C. Hoffmann, D. M. Owen, A. K. Shukla, J. Selent, S. J. Hill, D. Calebiro, Plasma membrane preassociation drives β-arrestin coupling to receptors and activation. Cell 186, 2238-2255.e20 (2023).

β-アレスチンと細胞膜との事前結合によりGPCRとの相互作用が促進される

Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、リガンドに結合するとGタンパク質と相互作用してGタンパク質を活性化し、細胞内シグナルを伝達する。活性化されたGPCRは、GPCRキナーゼによってC末端残基がリン酸化され、β-アレスチンタンパク質の動員が促進される。Gタンパク質シグナル伝達を阻害することに加えて、β-アレスチンは、クラスリン被覆ピット(CCP)を介したGPCR内部移行と、内部移行した受容体によるGタンパク質非依存性の代替シグナル伝達の両方を可能にする。Grimesらは、1分子生細胞イメージング、数理解析、分子動力学シミュレーションを組み合わせて、細胞膜における蛍光タグ付きβ-アレスチン2とβ2-アドレナリン受容体(β2AR)分子間の相互作用を調べた。画像解析により、β-アレスチン2が細胞質から細胞膜に自発的に動員され、そこで一過性の側方拡散を経て膜から解離することが明らかになった。動員されたβ-アレスチン2のほとんどはβ2ARと共局在しなかった。β2ARリガンドであるイソプロテレノールの存在下では、膜解離速度が低下するため、β-アレスチン2が細胞膜に蓄積した。β-アレスチン2とβ2AR間の相互作用のほとんどは一過性であり、側方拡散によって起こった。リガンドの存在下では、β-アレスチン2とβ2ARの両方が独立してCCPに拡散し、その後複合体として細胞膜を通って共拡散するのではなく、共局在するようになった。細胞膜へのβ-アレスチン2の自発的動員は、そのC末端エッジ領域の膜への挿入に依存した。β-アレスチン2と膜とのこの事前結合は、その後の受容体との相互作用およびCCPでの蓄積に必要であった。膜におけるβ-アレスチン2とβ2ARとの相互作用には、受容体のC末端尾部の存在が必要であり、β-アレスチン2をより長寿命で活性な構造に安定化させ、受容体とは独立してCCPへ拡散できるようにさせた。これらのデータを総合すると、β-アレスチン2と細胞膜との事前結合により、受容体との相互作用とその後の活性化が促進されることが明らかになった。

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2023年6月6日号

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