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COVID-19ハムスターモデルにおいて宿主防御の作動の遅延がSARS-CoV-2ウイルス血症と遠位器官の増殖性感染を可能にする
Delayed engagement of host defenses enables SARS-CoV-2 viremia and productive infection of distal organs in the hamster model of COVID-19
SCIENCE SIGNALING
13 Jun 2023 Vol 16, Issue 789
[DOI: 10.1126/scisignal.adg5470]
Lucia Carrau1, Justin J. Frere1, Ilona Golynker1, Alvaro Fajardo1, Cristobal F. Rivera2, Shu Horiuchi1, Tyler Roonprapunt1, Judith M. Minkoff1, Daniel Blanco-Melo3, Benjamin TenOever1, *
- 1 Department of Microbiology, New York University Langone Medical Center, New York, NY 10016, USA.
- 2 Department of Cell Biology, New York University Langone Medical Center, New York, NY 10016, USA.
- 3 Vaccine and Infectious Disease Division, Fred Hutchinson Cancer Research Center, Seattle, WA 98104, USA.
* Corresponding author. Email: benjamin.tenoever@nyulangone.org
Editor's summary
SARS-CoV-2感染は、肺の最初の感染部位から遠位の器官に伝播する可能性がある。Carrauらは、SARS-CoV-2の伝播が、感染に対する肺の自然免疫応答に依存することを見出した。ハムスターにSARS-CoV-2を鼻腔内感染させると、肺で高いウイルス価が認められたが、血中または遠位器官では認められず、全身性インターフェロン応答が生じた。鼻腔内感染時に免疫抑制剤を投与した動物、または静脈内感染させた動物では、全身性インターフェロン応答の低下、ウイルス血症(血中にウイルスが存在すること)、遠位器官の感染が認められた。これらの結果は、肺のSARS-CoV-2感染によって誘導される全身性抗ウイルスシグナル伝達が、遠位の非肺組織をその後の感染から保護することを示唆している。—Wei Wong
要約
感染に応答して発現する臨床症状は、病原体と宿主防御の相互作用によって生じる。COVID-19の病原体であるSARS-CoV-2は、これらの防御に直接的に拮抗し、肺において、細胞が感染に屈して貪食されたときにのみ現れる遅延型免疫作動を引き起こす。COVID-19のゴールデンハムスターモデルを用いて、われわれは、気道のSARS-CoV-2感染と、それに続く全身性宿主応答との間のダイナミクスを解明しようと考えた。早期のSARS-CoV-2複製は、主に気道と嗅覚系に限局し、それより低い程度に心臓や消化管で認められるが、循環するI型およびIII型インターフェロンにより、すべての器官で宿主抗ウイルス応答を引き起こすことがわかった。さらに、免疫抑制剤またはSARS-CoV-2の静脈内投与によって気道での応答を低下させると、免疫プライミングの低下、ウイルス血症、ウイルス親和性(肝臓、腎臓、脾臓および脳の増殖性感染など)の上昇が生じることが示された。最後に、気道の増殖性感染が、全身での効果的な抗ウイルス応答の開始に必要であることが明らかになった。総合すると、これらのデータは、COVID-19が多様な臨床症状を引き起こす仕組みを説明しており、感染過程における疾患の転帰は免疫作動の速度と強度の副産物である可能性がある。これらの研究は、COVID-19の多様な臨床症状の機構的基盤に関するさらなる知見を提供しており、気道が病原体の認識後に全身性免疫防御をもたらす能力を強調している。