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lncRNA LETS1はTβR1安定化機構を転写的に活性化することによってTGF-β誘導性EMTとがん細胞遊走を促進する

The lncRNA LETS1 promotes TGF-β-induced EMT and cancer cell migration by transcriptionally activating a TβR1-stabilizing mechanism

Research Article

SCIENCE SIGNALING
20 Jun 2023 Vol 16, Issue 790
[DOI: 10.1126/scisignal.adf1947]

Chuannan Fan1, 2, Román González-Prieto1, 3, 4, Thomas B. Kuipers5, Alfred C. O. Vertegaal1, Peter A. van Veelen6, Hailiang Mei5, Peter ten Dijke1, 2, *

  1. 1 Department of Cell and Chemical Biology, Leiden University Medical Center, Postbus 9600, 2300 RC Leiden, Netherlands.
  2. 2 Oncode Institute, Leiden University Medical Center, Postbus 9600, 2300 RC Leiden, Netherlands.
  3. 3 Genome Proteomics Laboratory, Andalusian Center for Molecular Biology and Regenerative Medicine (CABIMER), University of Seville, Américo Vespucio 24, 41092 Seville, Spain.
  4. 4 Department of Cell Biology, University of Seville, Américo Vespucio 24, 41092 Seville, Spain.
  5. 5 Department of Biomedical Data Sciences, Sequencing Analysis Support Core, Leiden University Medical Center, Postbus 9600, 2300 RC Leiden, Netherlands.
  6. 6 Center for Proteomics and Metabolomics, Leiden University Medical Center, Postbus 9600, 2300 RC Leiden, Netherlands.

* Corresponding author. Email: p.ten_dijke@lumc.nl

Editor's summary

TGF-βシグナル伝達は、細胞に遊走性と浸潤性を与える上皮間葉転換(EMT)を刺激することによって、がんの進行を促進する。Fanらは、TGF-βに誘導される長鎖ノンコーディングRNAであるLETS1が、乳がん細胞および肺がん細胞においてEMTと遊走を刺激するTGF-βシグナル伝達の増強物質であることを明らかにした。LETS1は、転写因子NFAT5と相互作用することによって、I型TGF-β受容体(TβRI)を分解から保護する経路を転写的に活性化させ、それによってTGF-βシグナル伝達の正のフィードバックループを生み出している。ゼブラフィッシュ異種移植片モデルでは、LETS1を過剰発現させると、TGF-βシグナル伝達に依存する形で肺がん細胞の血管外遊走が促進され、LETS1を欠乏させると、乳がん細胞の血管外遊走が減少したことから、LETS1が患者におけるがん細胞の浸潤に関与している可能性が示唆された。—Annalisa M. VanHook

要約

トランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)シグナル伝達は、上皮間葉転換(EMT)とがん進行の重要なドライバーである。SMAD依存性TGF-βシグナル伝達では、TGF-β受容体複合体の活性化が細胞内受容体関連SMAD(SMAD2、SMAD3)のリン酸化を刺激し、リン酸化されたSMAD2およびSMAD3は核内へ移行して標的遺伝子の発現を促進する。SMAD7は、I型TGF-β受容体(TβRI)のポリユビキチン化を促進することによって、この経路を介したシグナル伝達を阻害する。われわれは、TGF-βシグナル伝達によって増加するだけでなく永続化する未注釈の核内長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)を同定してLETS1(lncRNA enforcing TGF-β signaling 1)と命名した。LETS1を欠損させると、in vitroでは乳がん細胞および肺がん細胞でTGF-β誘導性EMTと遊走が減弱され、ゼブラフィッシュ異種移植片モデルでは血管外遊走が減弱された。LETS1は、細胞表面のTβRIを安定化させることによってTGF-β-SMADシグナル伝達を増強し、それによって正のフィードバックループを形成していた。具体的には、LETS1は活性化T細胞核因子(NFAT5)を結合し、SMAD7の破壊複合体の構成要素であるオーファン核内受容体4A1(NR4A1)をコードする遺伝子の発現を誘導することによって、TβRIのポリユビキチン化を阻害した。全体として、これらの知見は、TGF-β受容体複合体を介したシグナル伝達を増強するEMT促進性lncRNAとしてLETS1を特徴づけるものである。

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