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多価の非対称性IL-2-Fc融合体は制御性T細胞に高い選択性を示す

Multivalent, asymmetric IL-2-Fc fusions show enhanced selectivity for regulatory T cells

Research Article

SCIENCE SIGNALING
17 Oct 2023 Vol 16, Issue 807
[DOI: 10.1126/scisignal.adg0699]

Brian T. Orcutt-Jahns1, Peter C. Emmel1, Eli M. Snyder1, Scott D. Taylor1, Aaron S. Meyer1, 2, 3, *

  1. 1 Department of Bioengineering, University of California, Los Angeles, Los Angeles, CA 90095, USA.
  2. 2 Jonsson Comprehensive Cancer Center, University of California, Los Angeles, Los Angeles, CA 90095, USA.
  3. 3 Eli and Edythe Broad Center of Regenerative Medicine and Stem Cell Research, University of California, Los Angeles, Los Angeles, CA 90095, USA.

* Corresponding author. Email: ameyer@asmlab.org

Editor's summary

サイトカインIL-2は、免疫系活性を永続させる細胞または抑制する細胞のいずれかを活性化することから、免疫療法におけるIL-2の利用には細胞選択性が重要となる。Orcutt-Jahnsらは、結合およびシグナル伝達のダイナミクスのモデルを用いて、免疫抑制性の制御性T細胞に対する選択性を高めた一連のIL-2バリアントを設計した。ヘテロ三量体であるIL-2受容体のα鎖への多価結合を利用したバージョンは、現行のIL-2治療よりも制御性T細胞に対する選択性が高かった。本アプローチは、自己免疫疾患の治療に有効性の高いIL-2バリアントにつながるかもしれない。
—Leslie K. Ferrarelli

要約

サイトカインインターロイキン-2(IL-2)は自己免疫疾患を治療する可能性を秘めているが、免疫抑制性の制御性T(Treg)細胞に対する特異性が低いことから、その使用は限界がある。IL-2受容体は、親和性と細胞特異性が可変的なα鎖、β鎖、γ鎖の組み合わせで構成されている。自己免疫疾患を治療するためのIL-2の遺伝子操作はこれまで、主として、選択性が低く低親和性の受容体への結合を抑えながら、比較的Treg選択性があり高親和性の受容体への結合を保持することに重点が置かれていた。しかし今回われわれは、アビディティ効果を介して高親和性を示す受容体に標的を絞って設計を改良することが、Treg選択性を最適化するための鍵であることを見いだした。野生型IL-2または、安定性のために親和性、価数、および抗体Fc領域への融合状態を変化させた変異型IL-2から構成される遺伝子組換え融合体を作製し、それにより誘導される、初代培養ヒト免疫細胞におけるシグナル伝達応答のダイナミクスおよび濃度依存性をプロファイリングした。Treg選択性およびシグナル伝達応答の変動は、多価結合および二量体増強アビディティ(相互作用部位の強度、数および立体構造からなる複合指標)から構築したモデルにより説明できた。われわれはこのモデルから、現在のデザインと比べて培養下でのTreg選択性が高い4価IL-2-Fc融合体を設計した。1つのα/β結合部位と1つのα鎖結合変異から構成される非対称性多価デザインにより、アビディティがIL2Rαに偏り、Treg選択性がさらに強化された。比較解析から、Treg選択性のためにはIL2Rαが至適な細胞表面標的であることが明らかにされ、このことは、IL2Rαに対するアビディティが、Tregsを選択的に標的化するIL-2バリアント作製のための最適経路である可能性を示していた。

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