NOの持続性作用

The long-lasting effects of NO

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
17 Oct 2023 Vol 16, Issue 807
[DOI: 10.1126/scisignal.adl3182]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: wwong@aaas.org

A. W. DeMartino, L. Poudel, M. R. Dent, X. Chen, Q. Xu, B. S. Gladwin, J. Tejero, S. Basu, E. Alipour, Y. Jiang, J. J. Rose, M. T. Gladwin, D. B. Kim-Shapiro, Thiol-catalyzed formation of NO-ferroheme regulates intravascular NO signaling. Nat. Chem. Biol. 19, 1256-1266 (2023).

A. L. Kleschyov, Z. Zhuge, T. A. Schiffer, D. D. Guimarães, G. Zhang, M. F. Montenegro, A. Tesse, E. Weitzberg, M. Carlström, J. O. Lundberg, NO-ferroheme is a signaling entity in the vasculature. Nat. Chem. Biol. 19, 1267-1275 (2023).

E. Martin, NO signal. Nat. Chem. Biol. 19, 1178-1179 (2023).

血管拡張を誘導可能なガス状伝達物質NOの安定付加体の特徴を明らかにする。

一酸化窒素(NO)は、セカンドメッセンジャーcGMPを産生してキナーゼPKGを活性化する可溶性グアニリルシクラーゼ(sGC)の補欠分子族フェロヘム基に結合することによって血管拡張を調整するガス状伝達物質である。2本の論文で、NOの不安定性と組織内および血液中のNOスカベンジングタンパク質の高存在量が考慮されたうえで、NOによって血管拡張が引き起こされる仕組みについての洞察が与えられている(Martinによる解説も参照)。1本目の論文では、DeMartinoらが、三価鉄ヘムによるNOの安定化とNO-フェロヘム誘導体の細胞作用および生理作用について記述した。溶液中および赤血球ゴースト膜内では、還元型グルタチオン(GSH)の添加によってNO-フェロヘムの形成が促進された。この付加体は膜からアルブミンへ転移されるため、これがNO-フェロヘムを膜から放出して血流中へ移送する経路となる。アルブミンからヘム結合タンパク質ミオグロビン(Mb)へのNO-フェロヘムの転移の誘導が可能になり、そのような転移は下流シグナル伝達にとって必要になる。NO、三価鉄ヘム、アルブミンの混合物はマウスにおいて、cGMP産生量の増加を伴って血小板活性化を阻害し、血管拡張を誘導した。この混合物には複数の血管拡張性化合物が含まれていたが、この混合物の血管拡張作用の動態は、GSH存在下で合成されたNO-フェロヘムを用いた場合のみ再現された。2本目の論文では、Kleschyovらが、NO-フェロヘムによってsGCが活性化される仕組みを解析した。NO-フェロヘム-L-CysやNO-フェロヘム-Mbなどの多様な合成NO-フェロヘム種によって、マウス冠動脈リングの弛緩が誘導された。NO-フェロヘム-Mbの場合、この作用にはsGCおよびcGMPが必要とされ、PKG標的のVASPのリン酸化の増加を伴った。NOスカベンジャーの存在下で行われた実験、またはNOを検知するためにデザインされた実験では、NOはNO-フェロヘム-Mbから放出されないことが示された。sGCは、細胞内では一般的にNO非感受性のヘム不含型でみられ、in vitroではNO-フェロヘムによって活性化されたが、NOによっては活性化されなかった。NO-フェロヘム-L-CysとNO-フェロヘム-Mbはいずれも、NOの場合に必要となる用量よりも低用量でマウスの血圧を低下させた。これら2本の論文は、不安定で掃去されやすいガス状伝達物質を安定化する経路と、その結果として生じる付加体によって血管拡張が誘導される仕組みを示している。

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