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ケモカインは炎症と疾患において複雑なシグナルを形成し、それは細胞外マトリックスのプロテオグリカンにより解読される

Chemokines form complex signals during inflammation and disease that can be decoded by extracellular matrix proteoglycans

Research Article

SCIENCE SIGNALING
7 Nov 2023 Vol 16, Issue 810
[DOI: 10.1126/scisignal.adf2537]

Amanda J. L. Ridley1, Yaqing Ou1, Richard Karlsson2, Nabina Pun1, Holly L. Birchenough1, Iashia Z. Mulholland1, Mary L. Birch3, Andrew S. MacDonald4, Thomas A. Jowitt1, Craig Lawless1, Rebecca L. Miller2, Douglas P. Dyer1, 5, *

  1. 1 Wellcome Centre for Cell-Matrix Research, Lydia Becker Institute of Immunology and Inflammation, Faculty of Biology, Medicine and Health, Manchester Academic Health Science Centre, University of Manchester, Manchester M13 9PT, UK.
  2. 2 Copenhagen Center for Glycomics, Department of Cellular and Molecular Medicine, Faculty of Health Sciences, University of Copenhagen, Blegdamsvej 3, DK-2200 Copenhagen N, Denmark.
  3. 3 Biological Services Facility, Faculty of Biology, Medicine and Health, University of Manchester, Manchester M13 9PT, UK.
  4. 4 Lydia Becker Institute of Immunology and Inflammation, Faculty of Biology, Medicine and Health, Manchester Academic Health Science Centre, University of Manchester, Manchester M13 9PT, UK.
  5. 5 Geoffrey Jefferson Brain Research Centre, Manchester Academic Health Science Centre, Northern Care Alliance NHS Group, University of Manchester, Manchester M6 8HD, UK.

* Corresponding author. Email: douglas.dyer@manchester.ac.uk

Editor's summary

ケモカインは細胞表面の同種ケモカイン受容体を刺激することで、免疫細胞の遊走を誘導する。Ridleyらは、異なるケモカインが同じ免疫細胞種を動員できるケモカイン系において、特異性がどのように達成されるかを実証した。動物種、組織および疾患特異的な遺伝子発現パターンの解析から、ケモカイン受容体CXCR3に対するCXCL9、CXCL10およびCXCL11のリガンドをコードする遺伝子がすべて同じ状況で発現することが明らかにされた。特異性をもたらしていたのは、これらケモカインとグリコサミノグリカンとの相互作用の違いであり、これがそれらの局在性とシグナル伝達のための可用性を制御していた。このことは、ケモカインを治療標的とするもう1つの方法を示唆している。—John F. Foley

要約

ケモカイン誘導性の白血球動員は、免疫応答および種々の疾患の鍵となる要素である。炎症性疾患においてケモカイン系を治療標的とすることは成功していないが、これは冗長性によるものであった。複数の研究から実証されているとおり、ケモカインがむしろ特異的で特化した機能を有しているため、われわれはその理由を検討した。ケモカインとその受容体をコードする遺伝子の発現を、様々な動物種、組織および疾患にわたって解析した。この解析から、同じ白血球種の動員を媒介する複数のケモカインをコードする遺伝子(例えばCXCR3リガンドであるCXCL9、CXCL10およびCXCL11をコードする遺伝子など)が同じ状況で発現するという、複雑な発現パターンが明らかになった。われわれは生物物理学的アプローチを通じて、これらのケモカインが細胞外マトリックスのグリコサミノグリカン(ECM GAG)と異なる相互作用を示し、その相互作用が特異的GAGの硫酸化により増強されることを明らかにした。最後にin vivoのアプローチから、CXCL9依存性の特異的T細胞サブセットの動員にはGAGとの結合が重要であるが、その他のサブセットにとっては重要でなく、さらにCXCR3の発現の有無を問わないことを実証した。またわれわれのデータから、ケモカインが細胞表面上で提示されるか、あるいは可溶性の高い状態を維持するかはECM GAGとの相互作用により制御されており、これがケモカインの可用性に影響してケモカイン作用の特異性を確実にしていることが明らかとなった。これらの知見により、ケモカインを介した免疫細胞の動員に関して機構的な理解が得られ、炎症性疾患において特異的ケモカインを標的とするための戦略が明らかとなった。

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