軸索に付いて離れて

Axon, “axoff”

Editor's Choice

SCIENCE SIGNALING
7 Nov 2023 Vol 16, Issue 810
[DOI: 10.1126/scisignal.adm7040]

Amy E. Baek

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: abaek@aaas.org

J. Groh, T. Abdelwahab, Y. Kattimani, M. Hörner, S. Loserth, V. Gudi, R. Adalbert, F. Imdahl, A. E. Saliba, M. Coleman, M. Stangel, M. Simons, R. Martini, Microglia-mediated demyelination protects against CD8+ T cell-driven axon degeneration in mice carrying PLP defects. Nat. Commun. 14, 6911 (2023).

細胞傷害性T細胞誘導性のミエリン撹乱モデルにおいて、ミクログリアによる脱髄は軸索変性の可能性を低下させる。

オリゴデンドロサイトは中枢神経系(CNS)の神経軸索を髄鞘化するが、ミエリンは、加齢や炎症に伴う疾患における有害な作用を受けやすい。ミエリンが劣化すると、軸索が異常な微小環境に曝露され、それにより軸索変性が引き起こされることが提唱されている。ミエリンの脱落と軸索変性との関係を調べるために、Grohらは、細胞傷害性T細胞によって軸索変性が誘導されるPlp変異(Plpmut)マウスモデルを検討した。CNSミエリンプロテオリピドタンパク質の変異型をコードするPlpmutを有するマウスは、神経変性を呈し、これはT細胞誘導性の脱髄と逆相関した。Plp過剰発現するトランスジェニックマウスでは、Plpmutマウスと比較して、薄い髄鞘をもつまたは髄鞘をもたない軸索がより多く認められた。軸索が機能不全の髄鞘に覆われたままである場合は、軸索変性が進行した一方、そのような軸索の脱髄には保護的な作用があった。野生型、PlpmutおよびPlp過剰発現マウスから得たミクログリアのフローサイトメトリー分析により、変異マウスとトランスジェニックマウスの両方で、2集団の活性化ミクログリアの存在が示され、これらは神経炎症に関連するミクログリアと類似していた。Plpmutマウスにおける脱髄依存性の活性化ミクログリアまたはミクログリアの除去によって、脱髄は減少した。脱髄は、軸索変性の徴候の減少に関連した。機能するリンパ球を欠損したPlpmutマウスでは、軸索脱落が減少し、傍絞輪部の軸索径の減少が弱まった。これらの結果から、ミエリンが撹乱されている場合には、脱髄が軸索変性に対して保護的に働く可能性があることが示唆される。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2023年11月7日号

Editor's Choice

軸索に付いて離れて

Research Article

進行性前立腺がんにおけるJNKに媒介されたNotch機能喪失の保存された機構

ケモカインは炎症と疾患において複雑なシグナルを形成し、それは細胞外マトリックスのプロテオグリカンにより解読される

最新のEditor's Choice記事

2024年4月16日号

腫瘍を倒すには非定型インテグリンが必要である

2024年4月9日号

伸張を感知して食欲を抑える

2024年4月2日号

アルツハイマー病に関連する脂肪滴

2024年3月26日号

傷つけるのではなく助けるようにミクログリアにバイアスをかける

2024年3月19日号

痒みを分極化する