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プロテインホスファターゼ6はKRAS変異がん細胞およびBRAF変異がん細胞においてNF-κBを活性化してMAPK経路阻害薬に対する感受性をもたらす
Protein phosphatase 6 activates NF-κB to confer sensitivity to MAPK pathway inhibitors in KRAS- and BRAF-mutant cancer cells
SCIENCE SIGNALING
14 May 2024 Vol 17, Issue 836
[DOI: 10.1126/scisignal.add5073]
Haibo Zhang1, Abigail Read1, †, Christophe Cataisson1, Howard H. Yang1, Wei-Chun Lee1, Benjamin E. Turk2, Stuart H. Yuspa1, Ji Luo1, *
- 1 Laboratory of Cancer Biology and Genetics, Center for Cancer Research, National Cancer Institute, Bethesda, MD, USA. 2Department of Pharmacology, Yale University School of Medicine, New Haven, CT, USA.
* Corresponding author. Email: ji.luo@nih.gov
† Present address: Division of Molecular Pathology, Institute of Cancer Research, London, UK.
Editor's summary
Ras-MAPK経路の阻害薬はRAS変異およびBRAF変異を有するがんの治療に用いられる。Zhangらは、MAPK経路の調節因子を見つけるためにCRISPRに基づくスクリーニングを行い、プロテインホスファターゼ6(PP6)がMAPK経路阻害薬に対する感受性を高めることを見出した。PP6の触媒サブユニットを欠損させると、スフェロイド培養およびマウスにおいて、NF-κBに依存する形でKRAS変異細胞およびBRAF変異細胞の増殖が促進され、MAPK経路阻害薬に対する両変異細胞の抵抗性が高まった。これらの知見は、PP6がKRAS変異細胞およびBRAF変異細胞のMAPK感受性に寄与していることを示し、NF-κB経路がPP6C変異細胞において共標的となりうることを示唆している。—Amy E. Baek
要約
Ras-マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路は、がん治療の主要な標的である。MAPK経路阻害薬に対するがん細胞の感受性を調節する遺伝経路をより深く理解するために、われわれは、変異型KRASを有する大腸がん(CRC)細胞株について、MAPK経路阻害薬を用いてCRISPRノックアウトスクリーニングを行った。PPP6Cにコードされたプロテインホスファターゼ6(PP6)の触媒サブユニットの遺伝子を欠損させると、MAPK経路阻害薬に対するKRAS変異CRC、BRAF変異CRC、およびBRAF変異メラノーマ(黒色腫)の抵抗性が高まった。MAPK経路阻害薬の非存在下では、CRC細胞のPPP6Cを欠損させると、二次元(2D)接着培養では細胞増殖が減少したが、3D培養の腫瘍スフェロイドとin vivoの腫瘍異種移植片の増殖は加速された。PPP6Cの欠損は、CRC細胞およびメラノーマ細胞において核因子κB(NF-κB)シグナル伝達の活性化を促進し、CRC細胞のMAPK経路の遮断によって誘導される細胞周期の停止とサイクリンD1量の減少を回避した。NF-κB活性を遺伝学的および薬理学的手法で阻害すると、in vitroのCRC細胞およびメラノーマ細胞、およびin vivoのCRC細胞において、MAPK経路阻害に対するPPP6C欠損細胞の感受性が回復した。さらに、PPP6CのR264点変異はCRC細胞の機能を欠失させ、PPP6C欠損で観察されたNF-κB活性化およびMAPK経路阻害に対する抵抗性の促進を表現型模写した。これらの知見は、PP6がKRAS変異がん細胞とBRAF変異がん細胞の増殖を抑制し、MAPK経路の出力の調節因子としてPP6-NF-κB軸を関与させ、PPP6C変異がん細胞においてNF-κB経路を共標的とする理論的根拠となることを示している。