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統合失調症治療薬チオチキセンはアルギナーゼ1および連続的なエフェロサイトーシスを誘導することによってマクロファージを刺激して病原性細胞を除去する
The antipsychotic drug thiothixene stimulates macrophages to clear pathogenic cells by inducing arginase 1 and continual efferocytosis
SCIENCE SIGNALING
8 Apr 2025 Vol 18, Issue 881
DOI: 10.1126/scisignal.ads6584
Yoko Kojima†, Zhongde Ye†, Fudi Wang, Mozhgan Lotfi, Caitlin Fox Bell, Shaunak Sanjay Adkar, Lingfeng Luo, Changhao Fu, Nicholas J. Leeper*
- Department of Surgery, Division of Vascular Surgery, Stanford University School of Medicine, Stanford, CA, USA.
- † These authors contributed equally to this work.
- * Corresponding author. Email: nleeper@stanford.edu
Editor's summary
連続的なエフェロサイトーシスは、マクロファージが損傷細胞や死細胞を繰り返し取り込むプロセスであり、炎症の解消と損傷組織の除去に重要である。脂質を蓄積した泡沫細胞は、マクロファージによって除去されるものの、その除去能の経時的な低下が原因で、動脈硬化プラークに蓄積する。Kojimaらは、統合失調症治療薬チオチキセンがマウスおよびヒトマクロファージによるアポトーシス細胞と脂質蓄積マクロファージの両方の取り込みを刺激することを明らかにした。チオチキセンは、ドーパミンシグナル伝達と拮抗することによって、および連続的なエフェロサイトーシスの主要なドライバーであるアルギナーゼ1をコードする遺伝子の発現を亢進させることによって、エフェロサイトーシスを促進させた。これらの知見は、損傷細胞の蓄積によって引き起こされる病態の治療にこの承認薬を使用できる可能性を示唆している。—Annalisa M. VanHook
要約
マクロファージによるアポトーシス細胞の貪食除去であるエフェロサイトーシスを刺激することは、蓄積し、がん、アテローム性動脈硬化症、感染症などの疾患に寄与する瀕死細胞および死細胞を除去する方法として提唱されている。しかし、エフェロサイトーシス促進療法のための多数の臨床プログラムは、健康な組織のオフターゲット除去に関連する毒性によって早期終了に追い込まれてきた。われわれは、確立されたリスクプロファイルを用いて可能性のあるエフェロサイトーシス促進療法を同定するために、約3000の米国食品医薬品局(FDA)承認薬および他の十分に特徴づけされた化合物を対象とし、エフェロサイトーシスを刺激する能力についてスクリーニングした。そして、統合失調症治療薬チオチキセンが、マウスおよびヒトマクロファージによるアポトーシス細胞および脂質蓄積細胞のエフェロサイトーシスを刺激し、アポトーシス細胞の連続的なエフェロサイトーシスを促進することを明らかにした。チオチキセンのドーパミン作動性シグナル伝達に対する抑制作用と合致して、ドーパミンはエフェロサイトーシスを強力に阻害し、その阻害作用はチオチキセンによって部分的にしか反転できなかった。マウスマクロファージにおけるチオチキセンの貪食作用促進効果は、レチノール結合タンパク質受容体Stra6Lをコードする遺伝子の発現量の増加に依存し、結果として連続的なエフェロサイトーシスの刺激因子アルギナーゼ1の産生促進にもつながった。これらの知見は、マクロファージにおいてドーパミンがエフェロサイトーシスを阻害することを示し、統合失調症治療薬として50年以上使用されてきた後発のFDA承認薬であるチオチキセンが、連続的なエフェロサイトーシスと病変組織の除去を促進する有望な候補であることを明らかにした。