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腸由来のソルビトールは腸内細菌の非存在下で脂肪性肝疾患を引き起こす
Intestine-derived sorbitol drives steatotic liver disease in the absence of gut bacteria

SCIENCE SIGNALING
28 Oct 2025 Vol 18, Issue 910
DOI: 10.1126/scisignal.adt3549
Madelyn M. Jackstadt1, 2, 3, Ronald Fowle-Grider1, 2, 3, Mun-Gu Song1, 2, 3, Matthew H. Ward1, 2, 3, Madison Barr1, 2, 3, Kevin Cho1, 2, 3, Hector H. Palacios4, Samuel Klein4, Leah P. Shriver1, 2, 3, Gary J. Patti1, 2, 3, 5, *
- 1 Department of Chemistry, Washington University in St. Louis, St. Louis, MO 63130, USA.
- 2 Department of Medicine, Washington University in St. Louis, St. Louis, MO 63110, USA.
- 3 Center for Mass Spectrometry and Metabolic Tracing, Washington University in St. Louis, St. Louis, MO 63130, USA.
- 4 Center for Human Nutrition, Washington University in St. Louis, St. Louis, MO 63110, USA.
- 5 Siteman Cancer Center, Washington University in St. Louis, St. Louis, MO 63110, USA.
- * Corresponding author. Email: gjpattij@wustl.edu
Editor's summary
食事によるフルクトースの過剰な摂取は、肝臓の脂質蓄積や脂肪性肝疾患の発症につながる可能性がある。Jackstadtらは、ゼブラフィッシュにおいて、食餌性グルコースは腸内でソルビトールに変換され、ソルビトールはその後、腸内細菌叢の非存在下で肝臓においてフルクトースに変換されることを見出した。ゼブラフィッシュに抗菌薬を投与して腸内細菌叢を枯渇させると、脂肪肝が生じ、この作用は、高濃度の外因性ソルビトールによって模倣され、ソルビトール生成の阻害またはソルビトール分解性エロモナス(Aeromonas)菌の腸内の再増殖によって減弱した。これらの結果は、ソルビトールはゼブラフィッシュの腸内でグルコースから生じることを示し、腸内細菌叢がソルビトール誘発性脂肪症に対する防御に関与することを明らかにしており、砂糖の代用品として用いられている食事性ソルビトールが、脂肪性肝疾患発症のリスクを増加させる可能性があることを示唆している。—Wei Wong
要約
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD)は、腸内マイクロバイオームの組成の変化と関連がある。今回われわれは、成体ゼブラフィッシュの腸内マイクロバイオームの枯渇が、標準餌を摂取している動物の脂肪性肝疾患の発症につながることを見出した。メタボロミクスと同位体追跡を用いて、食餌性グルコースは宿主の腸細胞によってソルビトールに変換されることを見出した。対照動物では細菌がソルビトールを分解したが、腸内マイクロバイオームを枯渇させた場合には、ソルビトールは魚の肝臓に移動した。肝臓内でソルビトールはフルクトース1-リン酸に変換され、フルクトース1-リン酸がその後グルコキナーゼを活性化し、解糖フラックスを増加させることにより、肝臓のグリコーゲンおよび脂肪量を増加させた。マイクロバイオームを枯渇させた動物においてソルビトール生成を阻害すると、十分に脂肪肝の発症が予防され、マイクロバイオームを枯渇させた魚の腸にソルビトール分解性のエロモナス(Aeromonas)菌株を定着させると、脂肪肝表現型がレスキューされた。逆に、高濃度のソルビトールを外因的に投与すると、腸内細菌叢枯渇の表現型が再現され、脂肪肝が誘発された。総合すると、これらの結果は、腸内のソルビトール分解性細菌が脂肪性肝疾患を予防することを示しており、食事性ソルビトールの過剰な摂取は、MASLD発症のリスクをもたらす可能性があることを示唆している。
2025年10月28日号






