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コルドイドグリオーマのPRKCA D463H変異はマウスにおいて早発性軟骨肉腫を誘導するキナーゼ不活性型機能獲得型対立遺伝子である

The chordoid glioma PRKCA D463H mutation is a kinase inactive, gain-of-function allele that induces early-onset chondrosarcoma in mice

Research Article

SCIENCE SIGNALING
4 Nov 2025 Vol 18, Issue 911
DOI: 10.1126/scisignal.adr0235

Véronique Calleja1, †, Jack C. Henry2, Mathias Cobbaut1, Joanne Sewell2, Karine Rizzoti1, Francesca Houghton1, Stefan Boeing1, Nneka Anyanwu1, Sunita Varsani-Brown1, Thomas Snoeks1, Alejandro Suárez-Bonnet3, Simon L. Priestnall3, Neil Q. McDonald1, 4, Angus J. M. Cameron2, *, Peter J. Parker1, 5, *

  1. 1 Francis Crick Institute, London NW1 1AT , UK.
  2. 2 Barts Cancer Institute, Queen Mary University of London, London EC1M 6BQ, UK.
  3. 3 Royal Veterinary School, Hatfield AL9 7TA , UK.
  4. 4 Birkbeck College, London WC1E 7HX, UK.
  5. 5 King’s College London, London SE1 1UL, UK.
  6. † Present address: HAWK Biosystems, Derio 48160, Spain.
  7. * Corresponding author. Email: a.cameron@qmul.ac.uk (A.J.M.C.); peter.parker@crick.ac.uk (P.J.P.)

Editor's summary

キナーゼPKCαの不活性化変異とシグナル出力の欠損は、多様ながんと関連する。Callejaらは、脳腫瘍のコルドイドグリオーマを引き起こすD463H変異がそのキナーゼ活性を不活性化する一方でタンパク質間相互作用を介してシグナル獲得型出力を誘導することを明らかにした。D463H PKCαはATPに結合したが、ATP加水分解能を欠損しており、結果的に、エフェクタータンパク質との相互作用の持続、インタラクトームの変化、遺伝子発現プログラムの亢進をもたらした。マウスにおいて、この変異体のヘテロ結合性発現は骨の腫瘍の急速な発生を引き起こしたことから、この変異は顕性の発がん能をもたらすことが示された。これらの知見は、PKCαの機能について洞察を与えるものであり、患者の腫瘍に対する治療戦略を導く可能性がある。—Leslie K. Ferrarelli

要約

キナーゼPKCαをコードするPRKCAの浸透性D463H変異は、脳腫瘍の一種であるコルドイドクリオーマのバイオマーカーでありドライバーでもある。本稿でわれわれは、マウスにおいてD463H変異体のヘテロ接合性ノックイン発現が軟骨肉腫の発生を誘発することを明らかにした。この変異型タンパク質キナーゼは触媒として不活性であったが、関連する不活性化変異D463Nではそのような発がん性表現型は観察されなかったことから、活性の欠損そのものがD463H変異の発がん性の原因ではないことが示された。培養グリオーマ細胞では、D463H変異体のふるまいは、関連するD463N変異体とは異なり、野生型PKCαのふるまいに酷似し、ATP結合を維持した。機構的には、PKCα D463Hは野生型キナーゼに比べて、そのインタラクトームに定量的変化がみられ、エピジェネティックな調節因子との会合が亢進された。このようなインタラクトームの変化は、PKCαに誘導される発現プログラムの促進によく似たトランスクリプトームの変化、BRD4、MYC、TGF-βによって調整される遺伝子シグネチャの亢進と同調していた。D463Hの発現は、BET阻害剤JQ1およびAZD5153に対する細胞の感受性を低下させたことから、この経路が機能的に重要であることが示された。これらの知見は、D463Hが非触媒性のアロステリックな機構を介して作用する顕性機能獲得型発がん性変異体であることを示している。

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