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一次感覚ニューロンのGαqシグナル伝達がオピオイドの鎮痛作用をNMDA受容体誘導性の耐性および痛覚過敏に変化させる
Gαq signaling in primary sensory neurons shifts opioid analgesia to NMDA receptor–driven tolerance and hyperalgesia
SCIENCE SIGNALING
2 Sep 2025 Vol 18, Issue 902
DOI: 10.1126/scisignal.adu8839
Daozhong Jin, Hong Chen, Meng-Hua Zhou, Yuying Huang, Shao-Rui Chen*, Hui-Lin Pan*
- Center for Neuroscience and Pain Research, Department of Anesthesiology and Perioperative Medicine, University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX 77030, USA.
- * Corresponding author. Email: huilinpan@mdanderson.org (H.-L.P.); schen@mdanderson.org (S.-R.C.)
Editor's summary
オピオイドは侵害受容シグナル伝達を遮断するが、長期間使用すると疼痛感受性が高まり、鎮痛耐性が促進される。これらの有害な作用には、脊髄の感覚ニューロン終末におけるNMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)と代謝型グルタミン酸受容体mGluR5の活性化が関わっている。Jinらは、モルヒネ投与によって、げっ歯類の脊髄におけるmGluR5とGαqの共役が増加し、Gαqは、NMDARリン酸化およびシナプス輸送のモルヒネ誘発性の増加に必要であることを見出した。Gαqを阻害またはノックダウンすると、モルヒネ誘発性の痛覚過敏と鎮痛耐性が軽減した。したがって、Gαqは、これらの薬剤の投与量を増加する必要性を下げながら、鎮痛効果を改善するための標的となる可能性がある。—Annalisa M. VanHook
要約
オピオイドは、µ-オピオイド受容体(MOR)を活性化し、痛みを感知するニューロン(侵害受容器)と脊髄の連絡を阻害することによって疼痛を緩和する。しかし、オピオイドを長期間使用すると、逆説的に、疼痛感受性の亢進(痛覚過敏)と鎮痛効果の低下(耐性)が生じる可能性があり、これらの一部は、脊髄の一次感覚ニューロンの中枢終末におけるNMDA型グルタミン酸受容体(NMDAR)の活性化に起因する。今回われわれは、このパラドクスにおけるGタンパク質Gαqの重要な役割を同定した。ラットにおいてGαqを薬理学的に阻害すると、感覚ニューロン終末でのNMDARのリン酸化、シナプス輸送および活性のモルヒネ誘発性の増加が打ち消され、脊髄後角ニューロンへのモルヒネ誘発性の興奮性侵害受容入力が減少した。モルヒネは、Gαqと代謝型グルタミン酸受容体5(mGluR5)二量体の共役を特異的に増強した。さらに、マウスの後根神経節ニューロンにおけるGαqの標的化ノックダウンにより、NMDARに関連する変化が正常化し、MOR活性化によって引き起こされるNMDAR介在性のシナプス増強が阻止された。また、Gαqシグナル伝達を薬理学的または遺伝学的に阻害すると、モルヒネの鎮痛効果が増強されるとともに、痛覚過敏と耐性が軽減した。これらの結果は、Gαqシグナル伝達が、MOR-mGluR5のクロストークを促進することによって、侵害受容器の中枢終末においてオピオイド誘発性のNMDAR過剰活性化に寄与することを明らかにしている。この経路を標的にすることで、オピオイドを用いた疼痛管理の安全性と有効性が向上する可能性がある。