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異所性ヘッジホッグシグナル伝達軸が遺伝性多発性骨軟骨腫マウスモデルにおいて指向性腫瘍増殖を駆動する
An ectopic Hedgehog signaling axis drives directional tumor outgrowth in a mouse model of hereditary multiple osteochondromas
SCIENCE SIGNALING
7 Oct 2025 Vol 18, Issue 907
DOI: 10.1126/scisignal.adu6357
Sarah E. Catheline†, Christina Mundy, Cheri Saunders, Sadhana Ramesh, Kelly A. Shaughnessy, Juliet Chung‡, Eiki Koyama, Maurizio Pacifici*
- Translational Research Program in Pediatric Orthopaedics, Division of Orthopaedic Surgery, Children’s Hospital of Philadelphia, Philadelphia, PA 19104, USA.
- † Present address: University of Rochester Medical Center, Rochester, NY 14642, USA.
- ‡ Present address: Wake Forest Baptist Medical Center, Winston-Salem, NC 27157, USA.
- * Corresponding author. Email: pacificim@chop.edu
Editor's summary
骨の縦方向の増殖は成長板で起きる。遺伝性多発性骨軟骨腫(HMO)は、小児の成長板に良性骨腫瘍を形成する。この腫瘍は思春期後に増殖を停止するが、退行はせず、骨格異常をもたらす。Cathelineらは、HMOマウスモデルにおいて、骨軟骨腫が成長板の周囲の結合組織から生じて成長板様の構造を獲得することを明らかにした。腫瘍増殖は、腫瘍の発生元である骨の増殖軸と直交する異所性増殖軸の確立によって駆動され、正常な成長板と同様にヘッジホッグシグナル伝達に依存した。これらの知見は、骨軟骨腫の起源と発生に光を当て、患者における骨軟骨腫の増殖を遅らせるための標的候補を示唆するものである。—Annalisa M. VanHook
要約
まれな小児疾患である遺伝性多発性骨軟骨腫(HMO)は、骨軟骨腫を特徴とする。この腫瘍は、骨格要素に沿った成長板軟骨膜から生じ、最初は異所性軟骨組織として出現し、それから一方向に増殖し、周囲の構造と衝突して損傷を与える。HMOは、ヘパラン硫酸(HS)合成酵素EXT1またはEXT2に影響してHSの欠乏やHS結合増殖因子の異常活性をもたらす変異によって引き起こされる。われわれは、成長板および軟骨膜のExt1をコンディショナルに欠損させたマウスを用いて、HMOにおける腫瘍増殖の根底にあるシグナル伝達経路および機構について調べた。発生中の腫瘍では、軟骨部でヘッジホッグ(Hh)シグナル伝達が活発化し、末端部に副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrP)が存在し、隣接する成長板における一方向性の正常な骨伸長に直交する異所性Hh-PTHrP軸が生じていた。Ext1変異体では、Hhシグナル伝達エフェクターSmoothened(Smo)の欠損は腫瘍増殖を抑制したが、Smo阻害因子Patched1(Ptch1)のヘテロ欠損は腫瘍増殖を促進した。成長板における正常な軟骨増殖を促進する2つのHS結合増殖因子BMP2およびアクチビンAは、Hhシグナル伝達が遮断されると正常な軟骨形成促進活性を働かせなかったことから、Hhシグナル伝達が軟骨形成に不可欠であることを示している。まとめると、これらの知見は、骨軟骨腫が生理学的シグナル伝達機構を乗っ取ることによって指向性増殖を先導して推進し、周囲の組織を損傷させるに至ることを明らかにし、治療介入のための標的候補を示唆している。