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RYR1のSer2902のリン酸化は骨格筋におけるCa2+漏出を減少させ、悪性高熱症および熱中症に対する感受性を低下させる

Phosphorylation of RYR1 at Ser2902 decreases Ca2+ leak in skeletal muscle and susceptibility to malignant hyperthermia and heat stroke

Research Article

SCIENCE SIGNALING
7 Oct 2025 Vol 18, Issue 907
DOI: 10.1126/scisignal.adx3087

Rachel Sue Zhen Yee1, †, Chang Seok Lee1, †, Ting Chang1, Sung Yun Jung2, Omar Yousif1, Courtney Cavazos1, John Colyer3, Filip Van Petegem4, George G. Rodney1, *, Susan L. Hamilton1, *

  1. 1 Department of Integrative Physiology, Baylor College of Medicine, Houston, TX 77030, USA.
  2. 2 Department of Biochemistry, Baylor College of Medicine, Houston, TX 77030, USA.
  3. 3 Badrilla Ltd., Leeds LS1 3HB, UK.
  4. 4 Department of Biochemistry and Molecular Biology, University of British Columbia, Vancouver, BC V6T1Z3, Canada.
  5. † These authors contributed equally to this work.
  6. * Corresponding author. Email: susanh@bcm.edu (S.L.H.); rodney@bcm.edu (G.G.R.)

Editor's summary

Ca2+放出チャネルのRYR1は骨格筋における基礎的な細胞内Ca2+漏出を仲介し、Ca2+漏出は、揮発性麻酔薬または熱に対する致死的な感受性を付与する突然変異によって増加する。Yeeらは、これらの感受性がRYR1を介するCa2+漏出に起因するかどうかを検討した。疾患誘発性のRYR1変異を有するマウスは、揮発性麻酔薬の曝露を生き延び、RYR1が骨格筋のCa2+漏出を減少させるリン酸化模倣変異も有する場合には、骨格筋の温度が熱負荷時に明らかな上昇を示さなかった。したがって、変異RYR1の漏れやすさを軽減することで、骨格筋における病的な熱産生が防止される。—Wei Wong

要約

リアノジン受容体1(RYR1)は、骨格筋の収縮とCa2+漏出の両方に必要とされる筋小胞体(SR)Ca2+放出チャネルである。RYR1の突然変異は、悪性高熱症感受性(MHS)や熱中症感受性増大(ESHS)を引き起こし、揮発性麻酔薬または熱への曝露時に過剰な骨格筋熱産生による死亡をもたらすこともある。今回、われわれは、横紋筋優先発現プロテインキナーゼ(kinase striated muscle preferentially expressed protein、SPEG)によるRYR1のSer2902のリン酸化がもつ分子的および生理的機能を検討した。SPEGによるリン酸化を模倣するためのSer2902→Asp2902(S2902D)点突然変異を有するRYR1を発現させた、SPEG欠損マウスの筋肉では、SR Ca2+スパークが減少した。S2902D点突然変異をホモ接合性に有するマウスの筋肉では、SR Ca2+トランジェントの低下と力発生のわずかな変化が認められたが、全体的に表現型の変化は軽度であった。RYR1のTyr524→Ser524点突然変異をヘテロ接合性に有するYSマウスは、Ca2+漏出の増加を呈し、MHSおよびESHSのモデルとなる。YSマウスとS2902Dマウスを交配すると、SR Ca2+漏出が減少し、マウスは揮発性麻酔薬と熱の両方に対して脱感作された。したがって、SPEGは、RYR1のSer2902をリン酸化することによって骨格筋におけるSR Ca2+漏出を抑制し、このリン酸化事象を模倣するSer2902からAsp2902への変異が、YSマウスを熱による死亡から救う。

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2025年10月7日号

Research Article

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