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セナタキシンは抗原受容体遺伝子多様化時の組換え精度を高める

Senataxin promotes recombination fidelity during antigen receptor gene diversification

Research Article

SCIENCE SIGNALING
14 Oct 2025 Vol 18, Issue 908
DOI: 10.1126/scisignal.adv8801

Alice Billie Libri1, Jinglong Wang2, Timea Marton1, Wei Yu1, François Dossin1, Gabriel Balmus3, 4, 5, Bernardo Reina-San-Martin6, 7, 8, 9, Richard Frock2, Chloé Lescale1, Ludovic Deriano1, *

  1. 1 Institut Pasteur, Université Paris Cité, INSERM U1223, Equipe Labellisée Ligue Contre Le Cancer, Genome Integrity, Immunity and Cancer Unit, 75015 Paris, France.
  2. 2 Department of Radiation Oncology, School of Medicine, Stanford University, CA 94305, USA.
  3. 3 UK Dementia Research Institute at the University of Cambridge, Cambridge CB2 0AH, UK.
  4. 4 Department of Clinical Neurosciences, University of Cambridge, Cambridge Biomedical Campus, Cambridge CB2 0AH, UK.
  5. 5 Department of Molecular Neuroscience, Transylvanian Institute of Neuroscience, 400191 Cluj-Napoca, Romania.
  6. 6 Institut de Génétique et de Biologie Moléculaire et Cellulaire (IGBMC), F-67400 Illkirch, France.
  7. 7 Institut National de la Santé et de la Recherche Médicale (INSERM), UMR-S1258, F-67400 Illkirch, France.
  8. 8 Centre National de la Recherche Scientifique (CNRS), UMR 7104, F-67400 Illkirch, France.
  9. 9 Université de Strasbourg, IG BMC UMR 7104, UMR-S1258, F-67400 Illkirch, France.
  10. * Corresponding author. Email: ludovic.deriano@pasteur.fr

Editor's summary

T細胞とB細胞における抗原受容体の多様なレパートリーを確保するため、これらの遺伝子はV(D)J組換えを受ける。この組換えは、RAG複合体によるDNA二本鎖切断(DSB)の形成によって開始され、続いて非相同末端結合(NHEJ)経路によるDNA修復が行われる。Libriらは、CRISPR-Cas9を用いたスクリーニングにより、RNA/DNAヘリカーゼであるセナタキシンが、これまで解明されていなかったV(D)J組換えにおける役割を担っていることを明らかにした。細胞およびマウスにおいて、セナタキシンはRAG誘導性DSBの修復を促進し、Ighアレルにおける異常な末端結合を制限し、それにより組換え過程の精度を保証した。—John F. Foley

要約

抗原受容体の多様性は、免疫グロブリン(Ig)およびT細胞受容体(TCR)をコードする遺伝子における可変(V)、多様性(D)、および結合(J)エクソンの集合に依存する。V(D)J組換え時に、RAG1/2ヌクレアーゼ複合体により導入されたDNA二本鎖切断(DSB)は、非相同末端結合(NHEJ)の過程によって修復される。われわれは、NHEJとキナーゼATMに依存するクロマチンDSB応答との間の機能的冗長性が、V(D)J組換えを制御する追加因子の活性を隠している可能性があるという仮説を立てた。われわれは、未処理またはATM阻害剤で処理したプロB細胞において、V(D)J組換えに関与する遺伝子に対する標的CRISPR-Cas9ノックアウトスクリーニングを実施した。RNA/DNAヘリカーゼであるセナタキシン(SETX)の欠損は、in vitroおよびマウスの両方において、V(D)J組換えを阻害し、コーディング末端とシグナル末端の間に異常なハイブリッド結合を形成することを明らかにした。NHEJ因子XLFが欠損した、またはATMが阻害された条件下でのSETXの欠損は、V(D)J組換えの著しい阻害と、未封鎖のコーディング末端の存在をもたらした。SETXは、クラススイッチ組換え過程で、Igh含有アレル間の異常な活性化誘導性シチジンデアミナーゼ(AID)誘導性DNA末端結合を制限した。合わせると、これらの知見は抗原受容体遺伝子の多様化における組換え精度を高めるというSETXのこれまで明らかにされていなかった役割を明らかにした。

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