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IFN-Iシグナル伝達が放射線照射後の唾液腺幹細胞および前駆細胞の活性を高める

IFN-I signaling enhances salivary gland stem and progenitor cell activity after irradiation

Research Article

SCIENCE SIGNALING
18 Nov 2025 Vol 18, Issue 913
DOI: 10.1126/scisignal.ady0398

Davide Cinat1, 2, *, †, Ryan van der Wal1, 2, Mirjam Baanstra1, 2, Abel Soto-Gamez1, 2, Rufina Maturi1, 3, Anne L. Jellema-de Bruin1, 2, Uilke Brouwer1, 2, Marc-Jan van Goethem2, Marcel A.T.M. van Vugt4, Lara Barazzuol1, 2, *, Rob P. Coppes1, 2, *

  1. 1 Department of Biomedical Sciences, University Medical Center Groningen, University of Groningen, Groningen, Netherlands.
  2. 2 Department of Radiation Oncology, University Medical Center Groningen, University of Groningen, Groningen, Netherlands.
  3. 3 Department of Molecular Medicine and Medical Biotechnology, University of Naples Federico II, Naples, Italy.
  4. 4 Department of Medical Oncology, University Medical Center Groningen, University of Groningen, Groningen, Netherlands.
  5. * Corresponding author. Email: d.cinat@stanford.edu (D.C.); l.barazzuol@umcg.nl (L.B.); r.p.coppes@umcg.nl (R.P.C.)
  6. † Present address: Division of Hematology, Department of Medicine, Stanford University School of Medicine, Stanford, CA, USA.

Editor's summary

唾液腺の損傷は、頭頸部がんに対する放射線療法の主たる有害な副作用である。Cinatらは、マウス唾液腺オルガノイドを用いて、光子(γ線)照射とプロトン照射の影響を比較した(SatoとYuによるFocusを参照)。両種類の放射線は、照射後早期に、同程度の量のDNA損傷とI型インターフェロン(IFN-I)シグナル伝達を引き起こした。後期になると、プロトン照射が転位因子のより顕著な抑制解除を引き起こし、IFN-I応答を増加させ、それによって幹細胞の増殖と自己再生を増強させた。IFN-βの投与により、光子照射マウスにおいて唾液腺幹細胞の活性が上昇したことから、従来の光子照射療法後の唾液腺回復を改善する可能性のある戦略が示唆された。—Annalisa M. VanHook

要約

がん治療における放射線療法の目標は、腫瘍のDNA損傷を最大限に高めながら、周囲の健康な組織、特に組織再生と臓器機能に不可欠な幹細胞および前駆細胞に対する有害な影響を最小限に抑えることである。今回、われわれは、頭頸部がんに対する主要な2つの治療法である光子照射とプロトン照射に対する分子応答を検討した。マルチオミクス解析とin vitro解析により、マウス唾液腺オルガノイドへの光子照射とプロトン照射のいずれでも、DNA損傷、微小核形成、細胞質DNAセンサーcGAS量の増加、I型インターフェロン(IFN-I)シグナル伝達などの、同様の早期応答が引き起こされることが明らかになった。さらに、両種類の放射線は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)の細胞質への放出を同程度に増加させ、mtDNAの認識に関与する細胞質核酸センサーであるZBP1の産生を刺激した。しかし、プロトン照射では、照射後後期に、より顕著なヘテロクロマチン調節因子の消失および転位因子の抑制解除が生じ、細胞内二本鎖RNA(dsRNA)の蓄積の増加およびRIG-Iを介するIFN-I応答の増強を伴った。遺伝的および薬理学的調節により、IFN-Iシグナル伝達が、in vitroおよびin vivoで照射後の唾液腺幹細胞および前駆細胞の活性増強に重要な役割を果たすことが示された。われわれの結果は、プロトン照射後には光子照射後と比較して、より顕著な分子変化が生じることを示し、唾液腺におけるIFN-Iシグナル伝達の再生促進性の役割を明らかにしており、この経路が、放射線誘発性の副作用を軽減するための有望な治療標的となることを示唆している。

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2025年11月18日号

Focus

IFN-I応答と上皮再生を活性化する

Research Article

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