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増殖駆動性がん遺伝子KRASまたはBRAFの増幅が結腸直腸がん細胞のMEK1/2阻害薬に対する獲得耐性を支えている

Amplification of the Driving Oncogene, KRAS or BRAF, Underpins Acquired Resistance to MEK1/2 Inhibitors in Colorectal Cancer Cells

Research Article

Sci. Signal., 29 March 2011
Vol. 4, Issue 166, p. ra17
[DOI: 10.1126/scisignal.2001752]

Annette S. Little1*, Kathryn Balmanno1, Matthew J. Sale1, Scott Newman2, Jonathan R. Dry3, Mark Hampson4, Paul A. W. Edwards2, Paul D. Smith3, and Simon J. Cook1*

1 Laboratory of Molecular Signalling, Babraham Institute, Babraham Research Campus, Cambridge CB22 3AT, UK.
2 Hutchison-MRC Research Centre and Department of Pathology, University of Cambridge, Hills Road, Cambridge CB2 0XZ, UK.
3 iMed Oncology, AstraZeneca, Mereside, Alderley Park, Macclesfield, Cheshire SK10 4TG, UK.
4 R&D Genetics, AstraZeneca, Mereside, Alderley Park, Macclesfield, Cheshire SK10 4TG, UK.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: annette.little@bbsrc.ac.uk (A.S.L.);simon.cook@bbsrc.ac.uk (S.J.C.).

要約:プロテインキナーゼ阻害薬に対する耐性の獲得は、がん治療において深刻化しつつある問題の1つである。われわれは、BRAF(COLO205細胞株、HT29細胞株)またはKRAS(HCT116細胞株、LoVo細胞株)に変異を有する結腸直腸がん細胞株において、MEK1/2(マイトジェン活性化または細胞外シグナル制御プロテインキナーゼキナーゼ1および2)阻害薬selumetinib(AZD6244)に対する獲得耐性のモデルを作成した。AZD6244耐性細胞は、AZD6244誘導性の細胞周期停止と細胞死に応答せず、阻害薬の非存在下での評価において、ERK1/2(細胞外シグナル制御キナーゼ1および2)経路のシグナル伝達の著しい亢進とサイクリンD1存在量の著しい増大を示した。ゲノム配列決定によって、AZD6244の主要な標的であるMEK1またはMEK2に新たな突然変異はないことがわかった。むしろ、耐性株においては、それぞれの増殖駆動性がん遺伝子であるBRAF600EまたはKRAS13Dの染色体内増幅による著しい発現上昇が認められた。BRAFを阻害すると、COLO205細胞においてAZD6244耐性が消失したことから、MEK1/2とBRAFの同時阻害によって、BRAF600Eを有する腫瘍の獲得耐性の可能性が低下するかもしれないことが示唆された。KRASのノックダウンによって、HCT116細胞のAZD6244耐性が消失するとともに、ERK1/2とプロテインキナーゼBの活性化が低下した。しかし、ERK1/2とホスファチジルイノシトール3-キナーゼシグナル伝達を同時阻害しても、AZD6244耐性にはほとんど影響がなかったことから、別のKRASエフェクター経路がこの過程に寄与していることが示唆された。マイクロアレイ解析によって、耐性細胞におけるMEK1/2経路の出力を表すことがこれまでに確認されている18の遺伝子の発現上昇が認められた。したがって、増殖駆動性がん遺伝子(BRAF600EまたはKRAS13D)の増幅は、ERK1/2経路を介するシグナル伝達を亢進させることによって、MEK1/2阻害薬に対する獲得耐性を促進する可能性がある。しかし、KRAS13Dの発現上昇によって、複数のKRASエフェクター経路が活性化されることから、KRAS変異がもたらす治療上の課題が強調される。これらの結果は、併用療法の使用に影響を及ぼす可能性がある。

A. S. Little, K. Balmanno, M. J. Sale, S. Newman, J. R. Dry, M. Hampson, P. A. W. Edwards, P. D. Smith, S. J. Cook, Amplification of the Driving Oncogene, KRAS or BRAF, Underpins Acquired Resistance to MEK1/2 Inhibitors in Colorectal Cancer Cells. Sci. Signal. 4, ra17 (2011).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

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