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酵母はより良い接合効率を達成するためにまわりの環境をダイナミックに変化させる

Yeast Dynamically Modify Their Environment to Achieve Better Mating Efficiency

Research Article

Sci. Signal., 16 August 2011
Vol. 4, Issue 186, p. ra54
[DOI: 10.1126/scisignal.2001763]

Meng Jin1, Beverly Errede1*, Marcelo Behar2, Will Mather3, Sujata Nayak3, Jeff Hasty3, Henrik G. Dohlman1,4, and Timothy C. Elston4*

1 Department of Biochemistry and Biophysics, University of North Carolina, Chapel Hill, NC 27599, USA.
2 Department of Chemistry, University of California, San Diego, La Jolla, CA 92093, USA.
3 Division of Biological Sciences, University of California, San Diego, La Jolla, CA 92093, USA.
4 Department of Pharmacology, University of North Carolina, Chapel Hill, NC 27599, USA.

* To whom correspondence should be addressed. E-mail: errede@email.unc.edu (B.E.);telston@med.unc.edu (T.C.E.)

要約:適切な発生と細胞移動のためには、シグナル勾配の維持と検知が重要である。単細胞生物の場合には、細胞は、勾配を検知することによって、遠く離れた交配相手や栄養源に向かっていくことができる。出芽酵母は、向化性伸長として知られる過程によって、接合フェロモンの勾配に対してその接合突起を伸ばす。MATα細胞は、MATa細胞の向化性と性接合分化を刺激するフェロモンのα因子を分泌する。一方、MATa細胞は、MATα細胞の向化性と性接合分化を刺激するフェロモンのa因子を分泌する。逆説的ではあるが、MATa細胞は、α因子を分解して接合応答を減弱させるプロテアーゼのBar1を分泌する。しかし、このプロテアーゼも効率的な接合には不可欠である。われわれは、向化性の伸長の際にMATa細胞が互いに回避し合うことを観察した。われわれは、このような挙動を解明するため、向化性の伸長をシミュレートする計算プラットフォームを開発した。このシミュレーションから、個々のMATa細胞はBar1の放出によってα因子の吸い込み装置(シンク)として働けることが示唆された。すなわち、フェロモン濃度の局所的な再形成が生じて、近くのMATa細胞から離れる方向に向かう勾配が形成され(自己回避)、その勾配は伸長の際に異性の相手側に向けて徐々に増幅されることが示唆された。勾配チャンバー内のBar1欠損細胞の挙動と接合試験のよって、このシミュレーションからの予測が裏付けられた。このように、出芽酵母はその環境をダイナミックに再構築することによって、外部刺激に対する生殖性応答を確実にし、非生殖性の細胞間相互作用を避けている。

M. Jin, B. Errede, M. Behar, W. Mather, S. Nayak, J. Hasty, H. G. Dohlman, T. C. Elston, Yeast Dynamically Modify Their Environment to Achieve Better Mating Efficiency. Sci. Signal. 4, ra54 (2011).

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2011年8月16日号

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