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記憶と認知におけるヒストン脱アセチル化酵素
Histone deacetylases in memory and cognition
Sci. Signal., 9 December 2014
Vol. 7, Issue 355, p. re12
DOI: 10.1126/scisignal.aaa0069
Jay Penney1,2 and Li-Huei Tsai1,2,*
1 Picower Institute for Learning and Memory, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA 02139, USA.
2 Department of Brain and Cognitive Sciences, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA 02139, USA.
* Corresponding author. E-mail: lhtsai@mit.edu
要約 過去30年の間に、ヒストンおよび非ヒストンタンパク質のリジンアセチル化は、細胞生物学の多数の側面を調節する主要な遺伝子発現調節因子として確立されてきた。ニューロンの成長と可塑性も例外ではない。リジンアセチル化および脱アセチル化が、脳機能と脳機能障害に果たす役割が、次々に明らかにされている。シナプス活性を遺伝子発現の変化に結びつける転写プログラムは、高次脳機能の基礎をなす可塑性機構にきわめて重要である。これらの転写プログラムは、ヒストンアセチル化の変化によって調節されることがあり、多くの場合、転写因子とヒストン修飾酵素が一緒に、可塑性関連遺伝子に動員される。リジンアセチル化酵素(KAT)によって触媒されるリジンアセチル化は、一般的に認知能力を促進する一方、ヒストンリジン脱アセチル化酵素(HDAC)によって触媒される、その反対の過程は、複数の脳領域において認知を負に調節すると考えられる。一貫して、さまざまなKATまたはHDACの変異や調節不全が、神経機能障害と神経変性に関与する。HDAC阻害剤は、加齢に伴う認知機能低下や神経変性疾患と闘うための治療として、また、とくにうつ病や心的外傷後ストレス障害の症状を改善する治療として、有望である。今回のReviewでは、認知機能と神経障害および疾患における、HDACの役割に関する証拠を考察する。とくに、リジンアセチル化のシナプス可塑性との結合に中心的役割を果たし、認知と疾患におけるHDAC阻害の効果の多くを仲介する、HDAC2に注目する。
J. Penney and L.-H. Tsai, Histone deacetylases in memory and cognition. Sci. Signal. 7, re12 (2014).