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発生生物学
内分泌的に働くヘッジホッグ
Developmental Biology
Endocrine Hedgehog
Sci. Signal., 9 December 2014
Vol. 7, Issue 355, p. ec340
DOI: 10.1126/scisignal.aaa4309
Annalisa M. VanHook
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
J. Rodenfels, O. Lavrynenko, S. Ayciriex, J. L. Sampaio, M. Carvalho, A. Shevchenko, S. Eaton, Production of systemically circulating Hedgehog by the intestine couples nutrition to growth and development. Genes Dev. 28, 2636-2651 (2014). [PubMed]
要約 ヘッジホッグ(Hh)は細胞運命および細胞挙動に局所的に影響する分泌リガンドである。ショウジョウバエの幼虫では循環血中にもリポタンパク質会合型のHhが存在しており、このことは、Hhが全身性に作用する可能性を示唆している。ショウジョウバエにおいて成長と発達は同期しており、ハエ幼虫は臨界重量に達した後に初めて囲蛹殻を形成する。Rodenfelsらはキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)において、組織特異的RNA干渉法を用い、血中Hhの発生源として中腸の腸細胞を特定した。Hhを欠損している幼虫の成長と囲蛹殻形成は対照に比べて早く、中腸の腸細胞でHh産生を特異的に回復させたとき、このような表現型も回復した。中腸の腸細胞によるHh産生を抑制したとき、幼虫は対照と比べ早く囲蛹殻を形成したが、その体サイズは対照と同じであった。反対に、中腸の腸細胞においてHhを過剰発現させると、血中Hhの存在量が増加し、幼虫の成長および囲蛹殻形成が遅延した。腸の発生とホメオスタシスに中腸由来のHhは不要であり、このことは、この作用が他の臓器が介していることを示している。脊椎動物の肝臓および脂肪組織に機能的に類似した組織である脂肪体において、Hhシグナル伝達のメディエーターを阻害したとき、成長を遅らせる血中Hhの能力が低下した。血中Hhはまた、ステロイドホルモンであるエクジソンの前胸腺からの産生を遅らせた。この前胸腺は、幼虫が臨界重量に達した後に囲蛹殻を形成できるよう、エクジソンの短期パルスを発している。栄養が十分な動物では、正常なトリアシルグリセロール(TAG)代謝に血中Hhは不要であったが、飢餓状態にある動物では、脂肪体からのTAGの動員に血中Hhは不可欠であった。飢餓は中腸におけるhhの発現を亢進し、また、中腸におけるhh発現を抑制したとき幼虫が飢餓状態で生存できる時間が短縮した。脂肪体はhhを発現していないが、脂肪体内のHh存在量は中腸におけるHh産生量と相関し、TAG動員のためには脂肪体におけるHh経路の構成要素の存在が必要であった。まとめるとこれらの結果は、中腸により産生される血中Hhは、栄養状態に応じて成長と発達を制御し、かつ飢餓状態における代謝を調節する、内分泌シグナルとして働くことを示唆している。マウスでも脂肪蓄積および糖代謝へのHhの関与が示唆されており、このことは、Hhのこのようなホルモン機能が保存されている可能性を示している。
A. M. VanHook, Endocrine Hedgehog. Sci. Signal. 7, ec340 (2014).