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幹細胞を蓄える:成体の消化管において修復、異形成および腫瘍形成を刺激する分化細胞の再プログラミング

Reserve stem cells: Differentiated cells reprogram to fuel repair, metaplasia, and neoplasia in the adult gastrointestinal tract

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Sci. Signal. 14 Jul 2015:
Vol. 8, Issue 385, pp. re8
DOI: 10.1126/scisignal.aaa7540

Jason C. Mills1,* and Owen J. Sansom2,*

1 Division of Gastroenterology, Departments of Medicine, Pathology & Immunology, and Developmental Biology, Washington University School of Medicine, St. Louis, MO 63110, USA.
2 Cancer Research UK Beatson Institute, Garscube Estate, Switchback Road, Glasgow G61 1BD, UK.

* Corresponding author. E-mail: jmills@wustl.edu (J.C.M.); o.sansom@beatson.gla.ac.uk (O.J.S.)

要約 分化細胞は特にin vitroにおいて運命を切り替えることができることが古くから知られているが、つい最近になって、成体の分裂終了細胞がin vivoでその分化状態を元に戻す機構を記述した論文が、多数発表されている。このような細胞の再プログラミングは、アポトーシスまたは有糸分裂に近い基本的な細胞プロセスであることをわれわれは提唱する。再プログラミングは成熟細胞から再生細胞を呼び出すことができるため、成体期に大きい損傷を受けるがその修復のための恒常的に活性化される成体幹細胞を欠いている膵臓などの組織の、長期的な維持には重要である。とはいえ、再プログラミングは胃や腸など成体の幹細胞を有する組織においてさえも、成熟細胞が、正常な幹細胞が傷害を受けたときに予備の(「静止した」)幹細胞となることを可能にすると考えられる。再プログラミングの潜在的なマイナス面は、これが後に成体期で生じるがんのリスクを増大させることであると、われわれは提唱する。成熟して長期間生存する細胞は、変異原に長年曝露される可能性がある。分化した分裂終了細胞の生理的機能に影響する突然変異はアポト−シスをもたらすことがあるが、増殖を支配している遺伝子の突然変異は自然淘汰されないかもしれない。したがって、細胞周期に再度入る再プログラミングは、このような変異を表面化し、不可逆的な前駆細胞様の増殖状態を引き起こすと考えられる。われわれは、胃および膵臓における再プログラミングが不可逆的で異形成性の前がん性増殖を刺激することを示した、最近のエビデンスを検討した。最後に、再プログラミングされた分化細胞が腸管のがんの起源細胞候補である可能性を、われわれがどのように考えているかを示している。

Citation: J. C. Mills, O. J. Sansom, Reserve stem cells: Differentiated cells reprogram to fuel repair, metaplasia, and neoplasia in the adult gastrointestinal tract. Sci. Signal. 8, re8 (2015).

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2015年7月14日号

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