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生死不問のおたずね者RAS:RAS変異がん標的治療の進展

RAS, wanted dead or alive: Advances in targeting RAS mutant cancers

Reviews

Sci. Signal. 24 Mar 2020:
Vol. 13, Issue 624, eaay6013
DOI: 10.1126/scisignal.aay6013

Clint A. Stalnecker and Channing J. Der*

Lineberger Comprehensive Cancer Center, University of North Carolina at Chapel Hill, Chapel Hill, NC 27599, USA.

* Corresponding author. Email: cjder@med.unc.edu

要約

あらゆるヒトのがんの約24%で変異が認められる発がん性RASタンパク質は、「創薬が困難(undruggable)」という評判を受けるに値する。とはいえ、複数の研究がそのような評判に挑戦している。ある発がん性RAS変異(G12C)を直接標的とする初の低分子で現在臨床評価が進められており、抗RASの治療戦略の発見には著しい進展がみられている。さらに、その応用が広がる中から、いずれのRASタンパク質(HRAS、NRASおよびKRAS4A/KRAS4B)も、いずれの発がん性RAS変異(Gly12、Gly13およびGln61残基での変異など)も、RASのシグナル伝達および機能に同じ影響を及ぼさないという新たな洞察も得られている。変異型RASとの関連で非変異の野生型RASタンパク質の役割が標的となり得るという考えが高まりつつあり、RASとグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)活性化との相互作用の直接阻害戦略、もしくは受容体チロシンキナーゼに媒介され、GEFに依存するRAS活性化の直接阻害戦略(例えば、足場ホスファターゼSHP2を標的にするなど)、が報告されている。最後に、RASシグナル伝達の下流エフェクターを標的とする薬剤の開発が、大幅に前進している。われわれは本総説において、がんにおけるRASタンパク質を標的とする中でのいくつかの重要な傾向を浮き彫りにしている。

Citation: C. A. Stalnecker, C. J. Der, RAS, wanted dead or alive: Advances in targeting RAS mutant cancers. Sci. Signal. 13, eaay6013 (2020).

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