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ピロトーシスで腫瘍を破壊する
Destroying tumors with pyroptosis
Sci. Signal. 24 Mar 2020:
Vol. 13, Issue 624, eabb8244
DOI: 10.1126/scisignal.abb8244
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
Z. Zhang, Y. Zhang, S. Xia, Q. Kong, S. Li, X. Liu, C. Junqueira, K. F. Meza-Sosa, T. M. Y. Mok, J. Ansara, S.Sengupta, Y. Yao, H. Wu, J. Lieberman , Gasdermin E suppresses tumour growth by activating anti-tumour immunity. Nature 579, 415-420 (2020).
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ガスダーミンEはピロトーシス依存的に抗腫瘍免疫を刺激することによって腫瘍の増殖を抑制する。
要約
ガスダーミンタンパク質は、炎症性カスパーゼによって切断されることで、細胞膜にポア(孔)を形成するN末端断片を生成し、炎症性サイトカインの放出とピロトーシスによる細胞死を招く。ガスダーミンE(GSDME)も、カスパーゼ3によってAsp270で切断可能であり、それによって非炎症性アポトーシスシグナルをピロトーシス細胞死へと変換する。GSDME量は多くのがんで減少しており、乳がん患者ではGSDME量の減少と生存率の低さに相関がみられることから、GSDMEは腫瘍抑制因子として機能することが示唆されている。Zhangらは、GSDMEの22のがん関連変異のうち20が、細胞内でGSDMEがピロトーシスを調節するのを妨げることを明らかにした。免疫正常マウスにおいて、GSDME欠損腫瘍細胞は、内在性GSDMEを有する腫瘍細胞よりも急速に増殖した。さらに、GSDME欠損腫瘍では浸潤性CD8+ T細胞とナチュラルキラー(NK)細胞の数が減少していた。逆に、野生型GSDMEを過剰発現する腫瘍では、増殖速度が低下し、免疫細胞の浸潤が増加していたが、こうした効果は機能喪失型GSDME変異体を過剰発現する腫瘍では認められなかった。GSDMEが過剰発現されている状況での腫瘍の増殖低下には、NK細胞とCD8+ T細胞が必要であった。GSDMEを過剰発現する腫瘍細胞を注入されたマウスは、二次腫瘍チャレンジから保護された。NK細胞とGSDMEを発現する標的細胞を共培養すると、NK細胞からの細胞傷害性顆粒の放出に依存し、カスパーゼ3に一部のみ依存するピロトーシスが引き起こされた。NK細胞顆粒中に見られるプロテアーゼのグランザイムBは、in vitroで野生型GSDMEを切断したが、D270A変異型GSDMEは切断せず、野生型GSDME発現細胞をグランザイムBとポア形成タンパク質パーフォリンで処理すると、ピロトーシスが引き起こされた。最後に、野生型GSDMEを過剰発現する腫瘍細胞と比べて、GSDMEのD270A変異体を発現する腫瘍細胞は、マウスにおいて急速に増殖し、免疫細胞の浸潤が減少していた。まとめると、これらのデータは、ピロトーシスに依存した抗腫瘍免疫の活性化を通じてGSDMEが腫瘍抑制作用を発揮することを示している。