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がんの血管機能の中心的な調節因子としての細胞外小胞

Extracellular vesicles as central regulators of blood vessel function in cancer

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SCIENCE SIGNALING
27 Sep 2022 Vol 15, Issue 753
DOI: 10.1126/scisignal.aaz4742

Fernanda G. Kugeratski1,†, Alice Santi2,†, Sara Zanivan3,4,*

  1. 1 Department of Immunology, University of Texas MD Anderson Cancer Center, Houston, TX 77054, USA.
  2. 2 Department of Experimental and Clinical Biomedical Sci-ences, Università degli Studi di Firenze, 50134 Firenze, Italy.
  3. 3 CRUK Beatson Institute, Switchback Road, Glasgow G61 1BD, UK.
  4. 4 School of Cancer Sciences, University of Glasgow, Switchback Road, Glasgow G61 1QH, UK.

* Corresponding author. Email: s.zanivan@beatson.gla.ac.uk

† These authors contributed equally to this work.

要約

血管は、酸素と栄養を送達して腫瘍の増殖を維持するほか、遠隔部位へのがん細胞の播種と腫瘍内への免疫細胞の動員を可能にしている。そのうえ、腫瘍血管系に構造的異常や機能的異常が生じると、侵襲性腫瘍微小環境の発生が促され、既存のがん治療法の有効性が損なわれる。細胞外小胞(EV)は、腫瘍の増悪の主なプレーヤーとして浮上し、がん細胞由来のEVが内皮細胞において腫瘍内の血管機能を変化させる多様な反応を引き起こすことを示すエビデンスは増え続けている。内皮細胞では、miRNA、lncRNA、cirRNA、タンパク質などの機能性カーゴの移送を介して、EV媒介性シグナル伝達が生じることがある。さらに、EVの膜結合タンパク質によって、受容体媒介性シグナル伝達が内皮細胞で誘発されることもある。まとめると、これらの機構は、内皮細胞をリプログラムし、腫瘍特有の悪化した血管新生シグナル伝達の持続に関与することによって、がんの増悪に影響する。血管新生を促進するこのようなEV依存性機構を標的とすることは、腫瘍血管系を正常化する新たな戦略をもたらす可能性がある。本稿でわれわれは、腫瘍の血管機能を調節する機構におけるがん細胞由来EVの寄与に関する現在までの知見を考察する。さらに、EVを用いて腫瘍血管の機能不全性を標的とする戦略の実用化機会についても考察し、質量分析に基づくプロテオミクス解析を用いて対処できるEV生物学分野の未解決問題に光を当てる。

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