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ヒト血中の免疫収束のクラスターが凝固と自然宿主防御を結び付ける
A cluster of immunoresolvents links coagulation to innate host defense in human blood
Sci. Signal. 01 Aug 2017:
Vol. 10, Issue 490, eaan1471
DOI: 10.1126/scisignal.aan1471
Paul C. Norris*, Stephania Libreros*, Nan Chiang, and Charles N. Serhan†
Center for Experimental Therapeutics and Reperfusion Injury, Department of Anesthesiology, Perioperative and Pain Medicine, Brigham and Women's Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.
† Corresponding author. Email: cserhan@bwh.harvard.edu
* These authors contributed equally to this work.
要約
血液凝固は、血管損傷時の出血過多を阻止する1種の防御応答である。われわれは、凝固中の脂質メタボロミクスに基づくヒト全血プロファイリングを通じて、凝固と、脂質メディエーター(LM)による炎症および感染の収束の間の関係を調べた。その結果、内因性に生成される血栓形成促進性で炎症促進性のLM(エイコサノイド)のほか、特殊な収束促進性メディエーター(specialized proresolving mediator:SPM)の一時的クラスターを同定した。エイコサノイドに加え、それぞれ生理活性をもつ濃度(0.1〜1 nM)で存在するレゾルビンE1(RvE1)、RvD1、RvD5、リポキシンB4およびマレシン1から構成される、特異的SPMクラスターが同定された。凝固血からアデノシンを除去したとき、SPMの生成量が顕著に増加し、RvD3、RvD4およびRvD6の生合成がさらに亢進した。シクロオキシゲナーゼ阻害薬であるセレコキシブおよびインドメタシンは、トロンボキサンおよびプロスタノイドの生成を阻害するが、クロット由来のSPMの生成は阻害しなかった。バイアスのないマスサイトメトリー解析から、ヒト血中で生成されたSPMクラスターは、単一細胞レベルで白血球を標的とし、好中球およびCD14+単球中のERKおよびCREBシグナル伝達を直接活性化することが示された。ヒトWBをこのSPMクラスターの成分で処理すると、白血球による大腸菌の食作用および傷害の両方が亢進した。まとめるとこれらのデータから、宿主防御を促進する、内因性の分子的なブレーキとアクセルを含む収束促進性のLM回路が同定された。このような一時的なLM-SPMクラスターは、精密医療および個別化医療のためにアクセス可能なメタボロミクスプロファイルを提供すると考えられる。
Citation: P. C. Norris, S. Libreros, N. Chiang, C. N. Serhan, A cluster of immunoresolvents links coagulation to innate host defense in human blood. Sci. Signal. 10, eaan1471 (2017).