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コカインに誘発されるマウス側座核におけるプロテオームの適応を解読

Decoding cocaine-induced proteomic adaptations in the mouse nucleus accumbens

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SCIENCE SIGNALING
16 Apr 2024 Vol 17, Issue 832
[DOI: 10.1126/scisignal.adl4738]

Philipp Mews1, *, Lucas Sosnick1, Ashik Gurung1, Simone Sidoli2, Eric J. Nestler1, *

  1. 1 Nash Family Department of Neuroscience and Friedman Brain Institute, Icahn School of Medicine at Mount Sinai, New York, NY 10029, USA.
  2. 2 Department of Biochemistry, Albert Einstein College of Medicine, New York, NY 10461, USA.

* Corresponding author. Email: pmews@bu.edu (P.M.); eric.nestler@mssm.edu (E.J.N.)

Editor's summary

コカインの使用、依存および再発は治療が難しい。コカインにより活性化される脳内の報酬回路には、CNSの側座核(NAc)が関わっている。Mewsらは、慢性的なコカインの使用、離脱および再使用時の時空間的なタンパク質のランドスケープを検討するため、マウスNAc細胞内のプロテオミクス解析を行った。その結果、離脱の間は細胞膜会合タンパク質と核内タンパク質のシャトリングが関係しているという知見が示され、治療戦略の開発につながるかもしれない複雑なタンパク質のダイナミクスに関する洞察が得られた。—Leslie K. Ferrarelli

要約

コカイン使用障害(CUD)は、細胞および分子の持続的な適応に起因する慢性的な精神神経疾患である。薬物使用障害の中でもCUDは、その有病率が上昇しつつあること、また承認されている薬物療法がないことで知られている。脳の報酬回路に不可欠な領域である側座核(NAc)は、CUDに固有の不適応行動の発現と継続に重要な役割を果たしている。われわれはニューロプロテオミクスの進歩を活用し、マウスモデルのNAcの細胞膜、細胞質基質、核およびクロマチンといったコンパートメントにまたがるプロテオミクス解析を実施した。その結果、コカイン曝露後および長期離脱の間には、即時性および持続性のプロテオーム修飾が生じることが明らかになった。コカインの初回曝露時と離脱後の再曝露時には一致したタンパク質制御パターンが確認され、これは離脱中に認められた特徴的なパターンとは対照的であった。膜コンパートメントで認められた顕著なプロテオームの変化は、コカイン離脱により引き起こされる適応性で長時間持続性の分子的反応を示していた。さらに、可溶性の核コンパートメントとクロマチン結合コンパートメントの間のタンパク質移行と考えられる事象を特定し、それにより、コカイン曝露後の細胞内タンパク質のダイナミクスに関して洞察が得られた。まとめると、本研究の知見は、コカインの使用によってNAc内で変化する複雑なプロテオームのランドスケープを明らかにし、治療候補に向けた将来の研究にデータセットを提供している。

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