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マイクロRNA miR-124を誘導する薬物が、レチノイン酸耐性神経芽腫細胞の分化を可能にする
A drug that induces the microRNA miR-124 enables differentiation of retinoic acid–resistant neuroblastoma cells
SCIENCE SIGNALING
15 Apr 2025 Vol 18, Issue 882
DOI: 10.1126/scisignal.ads2641
Lien D. Nguyen1, Satyaki Sengupta2, Kevin I. Cho1, Alexander Floru2, †, Rani E. George2, Anna M. Krichevsky1, *
- 1 Department of Neurology, Brigham and Women's Hospital and Harvard Medical School, Boston, MA 02115, USA.
- 2 Department of Pediatric Oncology, Dana-Farber Cancer Institute and Harvard Medical School, Boston, MA, 02115, USA.
- * Corresponding author. Email: akrichevsky@bwh.harvard.edu
- † Present address: College of Osteopathic Medicine, Kansas City University, Kansas City, MO 64106, USA.
Editor's summary
神経芽腫は、神経堤起源の前駆細胞に由来する小児がんの一種である。このがんの1つのサブタイプに、レチノイン酸治療などの標準治療に耐性を示す未熟間葉系(MES)細胞の存在を特徴とするものがある。Nguyenらは、神経芽腫細胞の分化を誘導するマイクロRNA miR-124の低分子活性化因子をスクリーニングし、PP121を同定した。これは、チロシンキナーゼおよびホスホイノシチドキナーゼを阻害する薬物である。BDNF活性化薬であるブファリンとPP121との併用は、レチノイン酸耐性MES神経芽腫細胞株の増殖を阻害し、分化を可能にした。本研究から、高リスク神経芽腫と関連する治療抵抗性MES細胞を分化させるための、新たな戦略が示された。—Amy E. Baek
要約
神経堤起源の前駆細胞に由来する小児がんである神経芽腫では、腫瘍細胞の不均一性が臨床的な課題となる。アドレナリン作動性(ADRN)神経芽腫細胞とは異なり、間葉系(MES)の性質を有する神経芽腫細胞は化学療法およびレチノイド治療に耐性を示し、これが再発と治療無効の一因となる。われわれは、神経由来の腫瘍抑制因子であるマイクロRNA miR-124のアップレギュレーションが、レチノイン酸耐性MES神経芽腫細胞の分化を促進できるか否かを検討した。miRNA調節性低分子のスクリーニング法を活用し、われわれは、チロシンおよびホスホイノシチドキナーゼの阻害剤PP121を強力なmiR-124誘導剤として同定し、確認した。PP121と、BDNFを活性化するブファリンとを併用することで、MES/異質性SK-N-AS細胞の増殖が相乗的に停止し、それらの細胞の分化が数週間にわたり持続的に促進された。このプロトコルにより、複数のMES神経芽腫および神経膠芽腫細胞株の分化も生じた。分化したMES/異質性SK-N-AS細胞のRNA-Seq解析から、ADRNコア調節回路が、クロム親和細胞とシュワン細胞の前駆細胞が関連する回路に置換されたことが明らかにされた。さらに、分化によって、CDK4/CDK6経路の阻害および転写プログラムの活性化と、それに伴う神経芽腫患者の転帰改善が認められた。これらの知見は、治療抵抗性の神経系がんの分化を誘導する臨床への橋渡しが可能な手法を示唆している。さらに、これらの寿命の長い分化細胞は、がん生物学および治療の根底にある機構の研究に使用できるかもしれない。