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毒性は量で決まる
The dose makes the poison
SCIENCE SIGNALING
15 Apr 2025 Vol 18, Issue 882
DOI: 10.1126/scisignal.ady1127
Wei Wong
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA.
Corresponding author. Email: wwong@aaas.org
K. Zuhra, M. Petrosino, L. Janickova, J. Petric, K. Ascenção, T. Vignane, M. Khalaf, T. M. Philipp, S. Ravani, A. Anand, V. Martins, S. Santos, S. Erdemir, S. Malkondu, B. Sitek, T. Kelestemur, A. Kieronska-Rudek, T. Majtan, L. Filgueira, D. Maric, S. Chlopicki, D. Hoogewijs, G. Haskó, A. Papapetropoulos, B. A. Logue, G. R. Boss, M. R. Filipovic, C. Szabo, Regulation of mammalian cellular metabolism by endogenous cyanide production. Nat. Metab. 7, 531–555 (2025).
Z. W. Grimmett, J. C. Schindler, J. S. Stamler, Gases define redox signalling: NO, H2S, O2… and cyanide. Nat. Metab. 7, 444–446 (2025).
内因的に産生されたシアン化物によるタンパク質の共有結合修飾が、哺乳類細胞の増殖を支持する。
生物学的に必要な物質の多くが、過剰量では毒性になる。Zuhraらは、シアン化物は哺乳類細胞において内因的に産生され、植物細胞や特定の細菌種および真菌種でそうであるように、シグナル伝達分子として作用することを示し、このリストにシアン化物を追加した(Grimmettらも参照)。シアン化物は、マウスの組織、特に肝臓で検出され、マウスの組織ホモジネートおよびさまざまな組織由来の細胞株にグリシンを添加したときに、グリシン受容体活性には非依存的に産生された。シアン化物はリソソームの低pH環境で産生され、このシアン化物産生は、主にリソソームに局在して酸化剤HOClを産生するペルオキシダーゼを必要とした。著者らは、HOClがグリシンと反応して中間体を産生し、中間体が酸性のpH値で変換または分解されてシアン化物になり、リソソームからガス状で拡散すると提唱した。マウス肝臓または肝細胞がんHepG2細胞に由来する溶解物をシアン化カリウム(KCN)とインキュベートすると、タンパク質が、CN基とシステイン残基が結合する翻訳後修飾であるシアニル化を受けた。HepG2細胞にグリシンを添加すると、ミトコンドリアのアデノシン5′-三リン酸産生と増殖が増加し、これらの作用は、シアン化物スカベンジャーまたはシアン化物産生阻害によって消失した。HepG2細胞にシアン化物を添加すると、少量で同様の作用が認められた。グリシン、低濃度シアン化物またはシアン発生化合物の添加によって、HepG2細胞では低酸素または低酸素再酸素化により誘導される細胞死が減少し、心筋虚血再灌流傷害を受けたマウスでは梗塞サイズが減少した。非ケトン性高血糖(NKH)はグリシンの過剰な細胞内蓄積を引き起こすグリシン代謝の先天異常である。NKH線維芽細胞は対照線維芽細胞よりはるかに多くのシアン化物を産生し、リソソームをアルカリ化するまたはシアン化物スカベンジャーを添加すると、NKH線維芽細胞の生存率が改善し、増殖が減少した。したがって、シアン化物は、増殖を支持するように哺乳類細胞の代謝を再配線する、内因的に産生されるガス状伝達物質である。