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精液由来の細胞外小胞において、TatとNF-κBに結合してHIV複製を阻害する可能性があるタンパク質を同定

Identification of proteins in semen-derived extracellular vesicles that bind to Tat and NF-κB and that may impair HIV replication

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SCIENCE SIGNALING
9 Sep 2025 Vol 18, Issue 903
DOI: 10.1126/scisignal.ado9243

Bryson C. Okeoma1, †, Hussein Kaddour2, †, ‡, Wasifa Naushad1, †, Victor Paromov3, Ashok Chaudhary4, 5, Alessio Noghero6, Jack T. Stapleton4, 5, Chioma M. Okeoma1, 2, 6, *

  1. 1 Department of Pathology, Microbiology and Immunology, New York Medical College, Valhalla, NY, USA.
  2. 2 Department of Pharmacology, Stony Brook University Renaissance School of Medicine, Stony Brook, NY 11794-8651, USA.
  3. 3 Meharry Medical College, Meharry Proteomics Core, RCMI Research Capacity Core, School of Medicine, Nashville, TN 37208, USA.
  4. 4 Department of Internal Medicine, Carver College of Medicine, University of Iowa, 200 Hawkins Drive, Iowa City, IA 52242-1109, USA.
  5. 5 Medical Service, Iowa City Veterans Affairs Medical Center, University of Iowa, 604 Highway 6, Iowa City, IA 52246-2208, USA.
  6. 6 Lovelace Biomedical Institute, Albuquerque, NM 87108-5127, USA.
  7. * Corresponding author. Email: cokeoma@nymc.edu
  8. † These authors contributed equally to this work.
  9. ‡ Present address: Regeneron Pharmaceuticals Inc., Tarrytown, NY 10591, USA.

Editor's summary

ヒト精液由来の細胞外小胞は培養下において、少なくとも部分的には宿主とウイルスの転写因子間の相互作用を阻害することで、HIVの複製を抑制する。Okeomaらは、ドナーから提供された小胞の内容物を解析し、ウイルス転写活性化因子Tatおよびヒト転写因子NF-κBサブユニットp65と相互作用するタンパク質を同定した。ごく少数のタンパク質が両因子と相互作用し、これらのタンパク質は転写、RNAプロセシングおよびエピジェネティックな制御因子からなるより大きなネットワークと相互作用していた。これらの知見は、HIV感染をさらに持続的に抑制したり、根絶さえできる、新たな治療薬につながるかもしれない。—Leslie K. Ferrarelli

要約

HIV-1の複製には宿主とウイルスの転写因子間の協調的作用が必要であり、そのうち最も重要な転写因子が、ウイルスのトランス活性化因子Tatと宿主の核因子κB(NF-κB)である。ヒト精液中に存在する細胞外小胞(EV)を添加して培養した感染細胞ではこの作用が阻害されることから、EVには、新たな治療薬の開発に役立つ可能性がある因子が含まれていることが示唆されている。今回われわれは、HIV-1未感染ドナーと感染ドナーからの精液由来EV(SEV)の内容物を調べ、HIVのTatおよびNF-κBサブユニットp65と相互作用する宿主タンパク質を同定した。これらの複合体の統合ネットワーク解析およびpathway enrichment解析から、遺伝子発現を制御している多数の生体機能との関連性が明らかにされた。SEV中の数種のタンパク質がTatとNF-κB p65の両方に結合した。それらはすなわち、足場であり細胞シグナル伝達調節性タンパク質であるAKAP9、Gタンパク質シグナル伝達調節因子ARHGEF28、エピジェネティックリーダーBRD2、低分子の核RNAプロセッサINTS1、および転写伸長阻害因子NELFBである。NELFBは、p65と複合体を形成したとき、別の転写伸長阻害因子であるHEXIM1とも相互作用したことから、SEVは、転写活性化と抑制の多重ネットワークを介してHIV-1の増殖を阻害する可能性が示唆された。これらのデータと根底にある機構の探索が、さらに効果的またはさらに持続的なHIV治療薬の開発に役立つかもしれない。

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