免疫に対するAPOE ε4

APOE ε4 on immunity

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SCIENCE SIGNALING
9 Sep 2025 Vol 18, Issue 903
DOI: 10.1126/scisignal.aec0130

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA. Email: lferrare@aaas.org

A. Shvetcov, E. C. B. Johnson, L. M. Winchester, K. A. Walker, H. M. Wilkins, T. G. Thompson, J. D. Rothstein, V. Krish, F. B. Imam, The Global Neurodegeneration Proteomics Consortium (GNPC), J. M. Burns, R. H. Swerdlow, C. Slawson, C. A. Finney, APOE ε4 carriers share immune-related proteomic changes across neurodegenerative diseases. Nat. Med. 31, 2590-2601 (2025).

B. Decourt, M. N. Sabbagh, M. M. Mielke, Large-scale proteomics project seeks cures for neurodegenerative diseases. Nat. Med. 31, 2488-2489 (2025).

D. M. Cairns, B. M. Smiley, J. A. Smiley, Y. Khorsandian, M. Kelly, R. F. Itzhaki, D. L. Kaplan, Repetitive injury induces phenotypes associated with Alzheimer's disease by reactivating HSV-1 in a human brain tissue model. Sci. Signal. 18, eado6430 (2025).

APOE ε4は全身性免疫を調節不全にして神経変性疾患への脆弱性を生み出す。

アポリポタンパク質Eのバリアントをコードする遺伝子であるAPOE ε4は、アルツハイマー病(AD)の最も強力な危険因子である。この遺伝子は、一般的に脳内のβ-アミロイドの毒性蓄積に関連するが、普遍的にアミロイド病理を呈するわけではない認知症やその他の神経変性疾患の危険因子でもある。Shvetcovらは、Global Neurodegeneration Proteomics Consortium(GNPC)のSomaScanデータセットに含まれる患者検体由来の脳脊髄液(CSF)および血漿中のタンパク質の特性を明らかにし、APOE ε4保有者は、疾患の状態にかかわらず、免疫系の調節不全を示唆する全身性のプロテオーム変化を共有していることを見出した(このコンソーシアムから発表されたさらに多数の一連の論文を論じたDecourtらによる記事も参照)。APOE ε4保有者は、ウイルスが関係する過程(肝炎ウイルス、単核球症を引き起こすヒトヘルペスウイルスであるエプスタイン・バーウイルスなど)、炎症促進性の免疫経路(サイトカインシグナル伝達)および循環免疫細胞種(単球、メモリーCD8+およびγδ T細胞、制御性T細胞、ナチュラルキラー細胞など)に濃縮されたプロテオームシグネチャーを有した。このプロテオームシグネチャーから、著者らは、それぞれの神経変性疾患群においてAPOE ε4の保有者と非保有者を区別することができた。APOE ε4シグネチャーは性別、人種、病理組織所見、血漿中β-アミロイド濃度には依存しなかったが、いくつかの環境因子および生活習慣因子に、保有者の特定の群との関連が認められた。例えば、APOE ε4保有者の性別および人種とAD、保有者の糖尿病とパーキンソン病、保有者の年齢および高血圧と障害の診断がないこととの間に関連が認められた。Science Signalingのアーカイブでは、Cairnsらが、APOE ε4保有者では、反復性の軽度の頭部損傷に起因する炎症および神経膠症(脳常在免疫細胞やその他の細胞の活性化)によって、脳内に潜伏する一般的なヘルペスウイルスが目覚めることにより、ADおよび関連する神経変性疾患のリスクが上昇する可能性があることを示していた。総合すると、これらの研究は、APOE ε4は全身性免疫のより広範な調節因子であり、疾患特異的な因子に対する脆弱性を生み出す可能性があることを示している。これらの結果は、さまざまな神経変性疾患に対するより早期の介入戦略の開発に有用な情報をもたらす可能性がある。

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