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薬理学
気分障害を糖尿病と交換

Pharmacology
Swapping Mood Disorders for Diabetes

Editor's Choice

Sci. Signal., 5 March 2013
Vol. 6, Issue 265, p. ec54
[DOI: 10.1126/scisignal.2004120]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. Isaac, S. Boura-Halfon, D. Gurevitch, A. Shainskaya, Y. Levkovitz, Y. Zick, Selective serotonin reuptake inhibitors (SSRIs) inhibit insulin secretion and action in pancreatic β cells. J. Biol. Chem. 288, 5682–5693 (2013). [Abstract] [Full Text]

不安障害と気分障害の治療に使用される抗うつ薬である選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の長期的使用は、糖尿病と関連している。Isaacらは、SSRIが膵島細胞においてインスリン受容体基質2(IRS-2)の機能を阻害し、小胞体(ER)ストレスおよび細胞死を誘導することを明らかにした。マウスの膵β細胞株(Min6)を多様なSSRIで短期間処理したとき、IRS-2チロシン残基の基礎的およびインスリン誘導性の刺激性リン酸化の両方が阻害された。SSRIであるセルトラリンは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)、c-Jun N末端キナーゼ(JNK)、およびグリコーゲン合成酵素キナーゼ-3β(GSK-3β)を活性化した。JNKは、IRS-2のセリン残基とスレオニン残基の阻害性リン酸化を誘導する。たしかにセルトラリンはMin6細胞において、IRS-2のセリンおよびスレオニン特異的なリン酸化を誘導し、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)とそれとの会合、並びにキナーゼAktやリボソームS6キナーゼ1(S6K1)などの下流標的の活性化を抑制した。ただし、GSK-3βを欠乏させたとき、チロシン特異的なリン酸化とAktの活性化は回復したが、JNKを欠乏させてもこれは生じなかった。セルトラリンは、単離したマウス島細胞に同様の作用を発揮した。セルトラリンによる短期的処理は、Min6細胞と単離島細胞がグルコース駆動性の還元的代謝反応(インスリン分泌の必須プロセス)を行う能力を低下させ、これはLiCl(GSK-3βの阻害薬)の付加によって一部回復した。セルトラリンはMin6細胞からのグルコース刺激性インスリン分泌を抑制し、単離マウス島細胞とヒト島細胞からの分泌も抑制した。セルトラリンの長期的処理により、小胞体ストレス応答の主要要素をコードする遺伝子であるATF4CHOP、およびiNOSの転写が亢進し、このことはセルトラリンが小胞体ストレスを誘導したことを示唆している。長期的なセルトラリン曝露はMin6細胞のアポトーシスも誘導し、これはLiCl処理により阻害され、JNKの欠乏によっても抑制された。以上のように、今回の所見は、SSRIがインスリンシグナル伝達と島細胞の機能を障害することで糖尿病を引き起こす可能性を示唆している。

L. K. Ferrarelli, Swapping Mood Disorders for Diabetes. Sci. Signal. 6, ec54 (2013).

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2013年3月5日号

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気分障害を糖尿病と交換

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