神経科学
心理戦

Neuroscience
Mind Games

Editor's Choice

Sci. Signal., 19 March 2013
Vol. 6, Issue 267, p. ec65
[DOI: 10.1126/scisignal.2004152]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. Li, M. Jin, D. Zhang, T. Yang, T. Koeglsperger, H. Fu, D. J. Selkoe, Environmental novelty activates β2-adrenergic signaling to prevent the impairment of hippocampal LTP by Aβ oligomers. Neuron 77, 929–941 (2013). [PubMed]

認知能力および記憶の喪失はアルツハイマー病の主要な症状であり、認知刺激がこれらの症状を改善することが研究で示唆されている。ヒトAPPプロセシングにより毒性フラグメントAβを生成する(若年性アルツハイマー病のモデルである)トランスジェニックマウスを認知能力強化環境(EE)下におくと認知欠損が改善する。野生型マウスをEE下で飼育するとβ-アドレナリン受容体(β-AR)およびcAMPシグナル伝達の亢進を伴う長期増強(LTP)の閾値が低下する。晩発性アルツハイマー病をより正確にモデル化し、APPプロセシングに対する影響を排除するため、Liらは、標準飼育(SH)またはEE飼育マウスの海馬切片をAβに曝露し、これらの海馬における電気生理学的および生化学的変化を解析した。海馬切片標本にAβを添加するとLTPが阻害された。この効果は、若齢、成獣マウスともに、EE飼育によって予防されたが、成獣マウスでは若齢マウスと比べてより長期のEE飼育を必要とした。cAMPシグナル伝達の薬理学的活性化も、SH飼育マウスの海馬におけるAβによるLTPの阻害を予防し、非選択的β-AR遮断薬またはβ2-AR選択的遮断薬を投与するとEEによるLTPの亢進が阻害された。SHマウスに非特異的β-AR作動薬を長期投与するとAβによるLTP阻害が予防された。一方、非特異的β-AR遮断薬を投与すると、AβによるLTP阻害に対するEEの防御作用が阻害された。β2-ARの存在量はSHマウス海馬に比べEEマウス海馬のシナプトソーム標本中の方が多かったが、その他のβ-ARやドーパミン、セロトニンまたはムスカリン性アセチルコリン受容体の存在量は変わらなかった。SHマウスから採取した海馬切片をAβに曝露すると、シナプトソーム標本中のβ2-ARの存在量が減少し、Aβは培養ラット海馬ニューロンにおいてβ2-ARの内在化を促進した。以上、これらのデータから、認知的エンリッチメントまたはβ2-AR作動薬による早期の長期的治療によって、APPプロセシングに対する影響とは関係なく、Aβ毒性に関連した症状の進行を予防または軽減できると考えられる。

N. R. Gough, Mind Games. Sci. Signal. 6, ec65 (2013).

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