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がんの増殖を刺激する

Cancer
Fueling Cancer Growth

Editor's Choice

Sci. Signal., 13 August 2013
Vol. 6, Issue 288, p. ec188
[DOI: 10.1126/scisignal.2004619]

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

S. Hirabayashi, T. J. Baranski, R. L. Cagan, Transformed Drosophila cells evade diet-mediated insulin resistance through Wingless signaling. Cell 154, 664–675 (2013). [PubMed]

インスリンは、究極的には細胞のグルコース取り込みを可能にするホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)経路を活性化することで、細胞の増殖を促進する。糖尿病では、インスリン濃度が上昇し、組織がインスリン抵抗性になっている。糖尿病などの代謝性疾患は、特定のがんの発生率上昇と関係している。Hirabayashiらは、数種のヒトがん種で認められるRasとSrcの活性の増大を模倣するため、発がん性ras1G12Vと、Src阻害因子であるCskのヌル対立遺伝子を眼に発現しているショウジョウバエ(Drosophila)を用いて、がん細胞がどのようにしてインスリン抵抗性を克服しているのかを調べた。高ショ糖食(HDS)が給餌されたras1G12Vcsk/幼虫は眼に異常増殖を発現し、囲蛹殻形成前にほぼ死亡したが、同一カロリーの高脂肪食が給餌された幼虫ではそれが生じなかった。ras1G12Vcsk/幼虫でPI3K経路の活性を低下させたとき、異常増殖は抑制された。反対に、HDSが給餌されたras1G12Vcsk/幼虫の眼組織では、通常食が給餌された幼虫に比べPI3K活性が亢進していたが、インスリンへの感受性は維持されていた。対照食が給餌されたras1G12Vcsk/幼虫の細胞には、活性型Dronc(イニシエーターカスパーゼ)が認められ、この細胞はアポトーシスを遂げていた。HDSが給餌されたras1G12Vcsk/幼虫の細胞には活性型Droncが認められたが、Dronc下流のカスパーゼ阻害薬であるDiap1の存在量も増加しており、そのためにアポトーシスしなかった。そのような細胞は「不死細胞(undead)」と呼ばれている。対照食が給餌されたras1G12Vcsk/幼虫においてインスリン受容体の活性を上昇させると、Diap1存在量が増加し、一方でHDSが給餌されたras1G12Vcsk/幼虫では、PI3K経路の活性を低下させることでDiap1存在量の増加が妨げられた。不死細胞は、分裂促進因子であるWingless(Wg)を多量に産生する。この現象にはJnk経路の活性が必要である。HDSが給餌されたras1G12Vcsk/動物では、複眼原基中のWg存在量が増えたが、この反応はPI3K経路の活性を低下させることで消失した。HDSが給餌されたras1G12Vcsk/動物ではWgに対するRNA干渉(RNAi)によって、腫瘍増殖が抑制され、囲蛹殻形成までの生存率が上昇した。JNK経路活性を低下させたとき、HDS給餌ras1G12Vcsk/動物と、恒常的活性化型インスリン受容体を有する対照食給餌ras1G12Vcsk/動物の両方で、Wg存在量が低下した。HDS給餌ras1G12Vcsk/動物の眼組織では、インスリン受容体をコードする遺伝子の発現が増大したが、これはWg経路の転写活性を低下させることで消失した。HDS給餌ras1G12Vcsk/動物に2型糖尿病薬であるアカルボース、標準的Wntシグナル伝達経路抑制薬であるピルビニウム、またはAD81(Ras、SrcおよびTorを同時に標的とする、複数の薬理活性を有する薬物)を投与することで、腫瘍増殖が低下し、生存率が上昇した。アカルボース、ピルビニウムおよびAD81を併用したとき、HDS給餌ras1G12V csk/動物の生存率は、ほぼ対照動物近くまで回復した。したがって、インスリン抵抗性生物の腫瘍は、インスリン受容体コード遺伝子のWntによる活性化を必要とするフィードフォワード機構を通じて、インスリン感受性を維持していると考えられる。

W. Wong, Fueling Cancer Growth. Sci. Signal. 6, ec188 (2013).

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2013年8月13日号

Editor's Choice

がん
がんの増殖を刺激する

Research Article

ERBB2増幅乳がんの計算モデルによりMEK阻害薬とAKT阻害薬の併用よりもErbB2/3の併用阻害が優位であることが明らかに

Gβγはチャネルサブユニット間のクレフトで作用してGIRK1チャネルを活性化させることが計算モデルから予測される

Perspectives

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