生理学
心臓を修復する

Physiology
Repairing the Heart

Editor's Choice

Sci. Signal., 20 August 2013
Vol. 6, Issue 289, p. ec192
[DOI: 10.1126/scisignal.2004642]

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

Y. Fang, V. Gupta, R. Karra, J. E. Holdway, K. Kikuchi, K. D. Poss, Translational profiling of cardiomyocytes identifies an early Jak1/Stat3 injury response required for zebrafish heart regeneration. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 110, 13416–13421 (2013). [Abstract] [Full Text]

ゼブラフィッシュは傷害後に心筋を再生できるのに対し、ヒトおよびマウスでは心臓障害は線維性の再構築を引き起こす。翻訳リボソーム親和性精製法(translating ribosome affinity purification:TRAP)を用いてリボソームが結合したmRNAを検出することで、Fangらは、成体ゼブラフィッシュにおいて心筋の再生を促進するタンパク質を同定した。単離された心室では、切除による傷害から1日後に138個のmRNAの活発な翻訳が増加した。これらのうち、jak1stat3il6st(インターロイキン6シグナルトランスデューサー:interleukin 6 signal transducer)、およびsocs3b(サイトカインシグナル抑制因子:suppressor of cytokine signaling 3b)を含む、Jak1(ヤヌスキナーゼ:Janus kinase 1)–Stat3(シグナル伝達性転写因子:signal transducer and activator of transcription)経路のタンパク質のmRNA翻訳が心筋細胞でかなり増加した。タンパク質レベルでは、Stat3およびリン酸化Stat3の存在量も傷害後に増加した。il6stおよびsocs3bの翻訳は、切除1日後に心臓組織全体で増加した後、再生中は傷害部位だけに局在した。サイトカインをコードする転写産物の中では、il11aおよびlif(白血病抑制因子:leukemia inhibitory factor)mRNAだけが傷害された心臓でより活発に翻訳されたが、この活動は心内膜性細胞に限定されており、最初は心臓全体の心内膜に生じたが後に傷害部位に限定された。心室の切除前に誘導性ドミナントネガティブStat3(dnStat3)を発現しているトランスジェニックフィッシュでは、心筋細胞の増殖および心臓の筋肉化がかなり低下し、瘢痕が増加した。しかし、傷害されていない発生中のトランスジェニックフィッシュでは心筋細胞の増殖および成長が正常であったことから、Stat3シグナル伝達は心室筋肉の再生に非常に重要かもしれないが、通常の発生には重要でないかもしれないことが示唆される。野生型のゼブラフィッシュと比較して、dnStat3を発現しているゼブラフィッシュは、ホルモンRelaxin 3aをコードするrln3aの翻訳が顕著に減少していた。Stat3がrln3a遺伝子のプロモーターの複数の部位に結合すること、組換えヒトRLN3Aを注入すると、dnStat3ゼブラフィッシュにおける最初の心筋細胞増殖が救済されたことから、Rln3aが魚の再生過程に寄与することが示唆された。結果から、Jak1-Stat3シグナル伝達経路が魚における心臓再生を媒介すること、ヒトJAK1-STAT3経路のタンパク質もこの能力を有するかもしれないことが示唆される。

L. K. Ferrarelli, Repairing the Heart. Sci. Signal. 6, ec192 (2013).

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2013年8月20日号

Editor's Choice

生理学
心臓を修復する

Research Article

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