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アダプター分子TRAF6とTRAF3の下流のToll様受容体シグナル伝達を、チロシンキナーゼSykが特異的に制御する
The Tyrosine Kinase Syk Differentially Regulates Toll-like Receptor Signaling Downstream of the Adaptor Molecules TRAF6 and TRAF3
Sci. Signal., 20 August 2013
Vol. 6, Issue 289, p. ra71
[DOI: 10.1126/scisignal.2003973]
Ying-Cing Lin1, Duen-Yi Huang1, Ching-Liang Chu2, Yi-Ling Lin3, and Wan-Wan Lin1,4*
1 Department of Pharmacology, College of Medicine, National Taiwan University, Taipei 10051, Taiwan.
2 Department of Immunology, College of Medicine, National Taiwan University, Taipei 10051, Taiwan.
3 Institute of Biomedical Sciences, Academia Sinica, Taipei 11529, Taiwan.
4 The Graduate Institute of Medical Sciences, Taipei Medical University, Taipei 11031, Taiwan.
* Corresponding author. E-mail: wwllaura1119@ntu.edu.tw
要約
Toll様受容体(TLR)はパターン認識受容体の主要ファミリーで、自然免疫応答に重要な役割を果たしている。細胞膜におけるTLR4シグナル伝達の、そのリガンドであるリポ多糖体(LPS)による活性化は、E3ユビキチンリガーゼTRAF6(腫瘍壊死因子受容体関連因子6)およびキナーゼTAK1(トランスフォーミング増殖因子β-活性化キナーゼ1)に依存する炎症促進性経路を刺激する。一方で、エンドソームでのTLR4シグナル伝達は、TRAF3およびキナーゼTBK1(TANK結合キナーゼ1)に依存する経路を介して、I型インターフェロンの産生を刺激する。われわれは、非受容体型チロシンキナーゼSykがTLR4のエンドサイトーシスを部分的に媒介するが、TLR4を介するシグナル伝達では二重の役割も果たすことを見いだした。Syk欠損マクロファージにおいてLPS依存性にTLR4を刺激すると、野生型マクロファージを刺激した場合に比べ、TAK1が強く活性化され、炎症性サイトカインの産生が増大した。対照的に、Syk欠損マクロファージは、TLR4依存性のTBK1シグナル伝達活性化とI型IFNの産生が低下した。われわれは、TRAF6を含むシグナル伝達複合体とTRAF3を含むシグナル伝達複合体の両方に、Sykが存在することを見いだした。しかし、TRAF6とTRAF3のLPS依存性リジン63結合ユビキチン化は、Sykによって逆向きに制御されていた。われわれは、複数のTLRによって活性化される因子であるTRAF3、TRAF6、TAK1およびTBK1と相互作用する、Sykのドメインを特定した。このことは、Sykが様々なTLR反応の共通の調節因子として働く可能性を示唆している。まとめると、今回の研究結果は、TLRを介するTRAF6とTRAF3のシグナル伝達経路に、Sykが拮抗する調節因子として働くことを実証した。このことは、Sykが自然免疫応答を微調整し炎症を軽減できる可能性を示唆している。
Y.-C. Lin, D.-Y. Huang, C.-L. Chu, Y.-L. Lin, W.-W. Lin, The Tyrosine Kinase Syk Differentially Regulates Toll-like Receptor Signaling Downstream of the Adaptor Molecules TRAF6 and TRAF3. Sci. Signal. 6, ra71 (2013).