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がん
MAGEは腫瘍抑制因子を分解する
Cancer
MAGE takes down a tumor suppressor
Sci. Signal., 24 February 2015
Vol. 8, Issue 365, p. ec40
DOI: 10.1126/scisignal.aaa9611
Leslie K. Ferrarelli
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
C. T. Pineda, S. Ramanathan, K. Fon Tacer, J. L. Weon, M. B. Potts, Y.-H. Ou, M. A. White, P. R. Potts, Degradation of AMPK by a cancer-specific ubiquitin ligase. Cell 160, 715-728. [PubMed]
要約 エネルギーストレスに応答して、AMPK(5'アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ)は、キナーゼmTORによって媒介される増殖促進経路を抑制し、オートファジーのようなエネルギー産生経路を促進する。AMPKの存在量の減少は、腫瘍増殖と関連している。メラノーマ抗原(MAGE)をコードする遺伝子は、精巣を除く成体組織では一般にサイレントであり、がん細胞で異常発現される。Pinedaらは、一部のMAGEコード遺伝子の再活性化が、様々ながんにおけるAMPKの分解を促進することを見出した。MAGE-A3およびMAGE-A6(ここではMAGE-A3/6とする)をコードする遺伝子の発現は、マウスおよびヒトの様々な組織のうち精巣に制限されるが、MAGE-A3/6は、様々なヒト腫瘍において豊富に存在し、患者の生存不良と相関していた。がん細胞株におけるMAGE-A3/6のノックダウンは、細胞増殖および生存率を低下させた。MAGE-A3/6の過剰発現は、マウス線維芽細胞の増殖と大腸がんおよび非形質転換大腸上皮細胞における足場非依存性増殖を促進した。MAGE-A3/6は、E3ユビキチンリガーゼTRIM28に結合し、その活性を促進する。AMPKα1は、in vitroにおいてMAGE-TRIM28複合体の基質であった。MAGE-A3/6あるいはTRIM28のノックダウンは、HeLa細胞におけるAMPKα1のユビキチン化を減少させ、そのmRNA存在量に影響を与えることなく、トータルおよびリン酸化AMPKα1の存在量を増加させた。しかしながら、MAGE-A3/6陰性細胞におけるTRIM28のノックダウンは、AMPKα1の存在量に影響を与えず、AMPKα1はGSTタグ付きMAGE-A3/6に結合したが、GST-TRIM28には結合しなかった。MAGE-A3/6あるいはTRIM28のノックダウンは、骨肉腫細胞株においてmTOR活性を抑制し、オートファジーを増加させたが、AMPK阻害剤の存在下ではみられなかった。患者腫瘍組織において、MAGE-A3/6の高存在量は、AMPKα1(mRNAではなく)タンパク質の低存在量およびmTOR活性マーカーの存在量増加と相関していた。これらの発見は、MAGE-A3/6が腫瘍細胞におけるAMPKα1のユビキチン媒介性分解を導くことを示唆している。
L. K. Ferrarelli, MAGE takes down a tumor suppressor. Sci. Signal. 8, ec40 (2015).