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神経科学
ストレス緩和のための過飲

Neuroscience
Binge drinking for stress relief

Editor's Choice

Sci. Signal., 7 April 2015
Vol. 8, Issue 371, p. ec81
DOI: 10.1126/scisignal.aaa2788

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

K. E. Pleil, J. A. Rinker, E. G. Lowery-Gionta, C. M. Mazzone, N. M. McCall, A. M. Kendra, D. P. Olson, B. B. Lowell, K. A. Grant, T. E. Thiele, T. L. Kash, NPY signaling inhibits extended amygdala CRF neurons to suppress binge alcohol drinking. Nat. Neurosci. 18, 545–552 (2015). [PubMed]

過飲はよくみられる型のアルコール乱用であり、ストレスを緩和する一つの方法として認識される場合が多い。過飲は、報酬探索行動とストレス感受性を調節する神経回路において、シグナル伝達を変化させる可能性がある。抗ストレス性の神経ペプチドであるNPYは不安を抑制する一方、ストレス関連ホルモンであるコルチコトロピン放出因子[CRF、コルチコトロピン放出ホルモン(CRH)としても知られる]は不安を増大させ、マウスにおいてエタノール摂取を促進する。Pleilらは、NPYシグナル伝達が、報酬および不安行動に関与する脳の視床下部−下垂体−副腎系のCRF含有ニューロンにおいて、抑制性シナプス後電流を誘導すること、また、過飲が、CRFニューロンのNPY受容体存在量を増加させることによって、この作用を増強することを見出した。NPY受容体Y1Rのアゴニストを分界条床核(BNST、視床下部−下垂体−副腎系の一部)に注入すると、マウスのアルコール過飲が抑制されたが、隣接する背側線条体への注入ではそのような抑制はみられなかった。一方、Y1RアンタゴニストをBNSTに注入すると、アルコール摂取が増加した。慢性的にエタノールを摂取したマウスまたはサルから得たBNSTスライスにおいては、Y1Rアゴニストのバス投与によって、微小抑制性シナプス後電流(mIPSC)の周波数が増加した。レポーターマウスにおいて、このmIPSC周波数増加は、CRF陽性ニューロンに認められた。Gタンパク質ヘテロ三量体Gi、プロテインキナーゼA(PKA)、または受容体輸送の選択的阻害剤にスライスを浸漬、または、阻害剤をスライスのシナプス後ニューロンに注射した後、NPYまたはY1Rアゴニストの投与に応答したmIPSC周波数をモニタリングしたところ、Y1Rは、BNSTにおけるシナプス後Gi共役受容体であり、PKA活性を阻害することによって、細胞表面のシナプス後γ-アミノ酪酸(GABA)A受容体の存在量を増加させることが明らかになった。BNST CRFニューロンにおいてGiシグナル伝達を化学遺伝学的に(ウイルスおよび薬剤によって)活性化させると、マウスの過飲が抑制された一方、CRFニューロンにおいてGsシグナル伝達を活性化させ、したがってPKAシグナル伝達を活性化させると、過飲が促進された。Y1Rアゴニストを1日のさまざまな時点で投与し、その作用を解析したところ、エタノールはY1Rシグナル伝達の概日制御を変化させることが示唆された。過飲したマウスでは、活動期のシナプス後CRFニューロンにおける、Y1Rの存在量と活性がより大きかった。NPY存在量は、毎回の過飲後に一過性に増加したのみであったが、Y1Rタンパク質の存在量と活性(mIPSC周波数の増加により測定)は、過飲を数回繰り返した後に増大し、数日間持続した。このように、慢性アルコール摂取は、BNSTにおけるNPY-Y1Rシグナル伝達軸の感受性を持続的に高めるとみられ、このことによって、過飲がストレス緩和剤として認識される理由が説明されると考えられる。

L. K. Ferrarelli, Binge drinking for stress relief. Sci. Signal. 8, ec81 (2015).

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