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概日リズム
翻訳にリズムを与える

Circadian Rhythms
Giving translation rhythm

Editor's Choice

Sci. Signal., 2 June 2015
Vol. 8, Issue 379, p. ec140
DOI: 10.1126/scisignal.aac6763

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

R. Cao, C. G. Gkogkas, N. de Zavalia, I. D. Blum, A. Yanagiya, Y. Tsukumo, H. Xu, C. Lee, K.-F. Storch, A. C. Liu, S. Amir, N. Sonenberg, Light-regulated translational control of circadian behavior by eIF4E phosphorylation. Nat. Neurosci. 18, 855–862 (2015). [PubMed]

J. O. Lipton, E. D. Yuan, L. M. Boyle, D. Ebrahimi-Fakhari, E. Kwiatkowski, A. Nathan, T. Güttler, F. Davis, J. M. Asara, M. Sahin, The circadian protein BLA1 regulates translation in response to S6K1-mediated phoshorylation. Cell 161, 1138–1151 (2015). [PubMed]

行動には、細胞レベルと生命体レベルで日周性がみられる。そのような概日時計の設定は、光への曝露によって調節される。光曝露によって、負のフィードバックループに制御される転写サイクルが駆動されるのである。すなわち、転写因子複合体BMAL1-CLOCKが転写制御因子PERおよびCRYのコード遺伝子の発現を刺激し、PERとCRYが複合体を形成してBMAL1-CLOCKの活性を抑制する。概日タンパク質翻訳にリン酸化が寄与する機構を2つの独立した研究グループが報告している。哺乳類では、視床下部の一部である視交叉上核(SCN)がマスター概日時計として機能しており、Caoらは、マウスのSCNを調べることで、毎日特定の時間のみに光に曝露されることによって翻訳開始因子eIF4Eのリン酸化が刺激されることを示した。しかも、eIF4Eのリン酸化は、キナーゼERK1およびERK2のリン酸化とERKの標的であるキナーゼMNK1のリン酸化と同様に、概日パターンを呈した。ERKまたはMNKのいずれかをリン酸化させるキナーゼの阻害薬を注射すると、SCNにおいて光に誘導されるeIF4Eのリン酸化は阻害された。リン酸化不能であるeIF4A(S209A)変異体を有する変異型マウスは、野生型マウスに比べて活動期間がより短く、光に応答して概日時計をリセットする能力がより低く、SCN内のPER1量およびPER2量がより少なく、光に応答して誘導されるPER1とPERの量が減少していた。これがPERの翻訳に対する特異的作用であることを裏付けるように、CLOCK、BMAL1、CYR1、CRY2の量はS209A変異型マウスと野生型マウスのSCNで同様であった。ポリソームプロファイリングでは、S209A変異型マウスの脳のより軽い分画にPer転写産物は存在するが、ClockBmal1Cry1Cry2転写産物は存在しないことが明らかになり、Per転写産物とリボソームの会合が特異的に減少したことを裏付けている。このように、eIF4Eのリン酸化は、PERの翻訳を特異的に亢進することによって概日時計の光同調に寄与する。

2つ目の論文で、Liptonらは、同調していない不死化マウス胚線維芽細胞(MEF)の細胞質分画から単離されたBMAL1が300を上回るタンパク質と共免疫沈降し、そのうち約3分の1はさまざまなデータベースで翻訳タンパク質複合体の一部またはリボソームの構成要素として注釈が付けられていることを見出した。ウェスタンブロットでは、BMAL1免疫沈降物中に翻訳開始因子eIF4F(eIF4E、eIF4A、eIF4Gで構成される)、eIF3B、PABPの存在が確認された。また、MEFまたはマウス肝臓ライセート中のBMAL1は、ほとんどのmRNAの5’末端にある7-メチルグアノシンキャップと構造的に類似しているm7-GTP抱合ビーズと会合した。BMAL1–/– MEFではタンパク質合成が減少しており、BMAL1–/–マウスの肝臓では、対照マウスの肝臓で観察されたタンパク質合成の概日変化が認められなかった。BMAL1はin vitroでは翻訳を促進し、翻訳レポーターを発現するHEK293T細胞では、DNA結合と転写活性に必要なbHLHドメインを欠損させたBMAL1は、BMAL1を過剰発現させた場合と同程度に、キャップに依存する翻訳を刺激した。BMAL1には、mTOR(ラパマイシンの機構的な標的)経路によって活性化されて翻訳を促進させるキナーゼS6K1の標的になりうるリン酸化部位モチーフがいくつかある。in vitroでS6K1によってBMAL1をリン酸化し、質量分析を行ったところ、Ser42がリン酸化部位であることが明らかになった。リン酸化部位に特異的な抗体を用いてBMAL1のリン酸化を検出したところ、S6Kを遺伝的に欠損している細胞では検出不能であり、mTOR活性が損なわれているマウス由来の細胞または海馬では低下していた。S42G変異型BMAL1は翻訳開始因子またはm7-GTP共役ビーズと相互作用せず、in vitroで翻訳を刺激しなかった。BMAL1のリン酸化の解析、S6K1および翻訳開始因子とBMAL1との会合、同調細胞におけるBMAL1のm7-GTP共役ビーズとの結合能から、関連のあるリズムパターンは経帯時(ZT)16〜20時にピークに達することが明らかになり、これはタンパク質合成のピークと同じ期間であった。このように、この研究は、mTOR経路の下流におけるタンパク質合成の概日制御因子として働くBMAL1の細胞質機能を同定した。

N. R. Gough, Giving translation rhythm. Sci. Signal. 8, ec140 (2015).

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