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薬理学
スタチンをアルツハイマー病に振り向ける

PHARMACOLOGY
Repurposing statins for Alzheimer’s disease

Editor's Choice

Sci. Signal. 11 Aug 2015:
Vol. 8, Issue 389, pp. ec223
DOI: 10.1126/scisignal.aad2049

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. Roy, M. Jana, M. Kundu, G. T. Corbett, S. B. Rangaswamy, R. K. Mishra, C.-H. Luan, F. J. Gonzalez, K. Pahan, HMG-CoA reductase inhibitors bind to PPARα to upregulate neurotrophin expression in the brain and improve memory in mice. Cell Metab. 22, 253–265 (2015). [PubMed]

スタチンは、メバロン酸経路の酵素HMG-coA還元酵素を阻害し、コレステロールを低下させ、炎症を抑制する薬剤である。Royらは、スタチンがさらに、マウスにおいて記憶を改善するニューロトロフィンの産生を誘導するが、その機構はコレステロール低下作用および抗炎症作用とは独立していることを見出した。培養マウスおよびヒトアストロサイトおよびミクログリアにおいて、種々のスタチンにより、ニューロトロフィンであるBDNFとNT-3をコードする遺伝子の発現が誘導された。培養アストロサイトにメバロン酸経路における代謝物の濃度を上げる前処理しても、シンバスタチンのニューロトロフィン誘導作用は消失しなかった。また、メバロン酸経路の鍵となる酵素のRNA干渉またはドミナントネガティブ変異体の発現を介して、この経路を阻害すると、それぞれが炎症マーカーに対して期待された影響があったが、ニューロトロフィン量は増加しなかった。シンバスタチンは、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)の3つのアイソフォーム(α、β、γ)すべての存在量と、PPAR応答エレメント(PPRE)含有レポーターの活性を上昇させたが、PPARαを欠損したアストロサイトでのみ、シンバスタチン曝露後のBDNFおよびNT-3誘導が欠損した。一方、PPARαを欠損したアストロサイトでは、シンバスタチンによって、HMG-coA還元酵素阻害を介する抗炎症作用は誘導された。シンバスタチンによって、野生型マウスの皮質ではBDNF存在量が増加したが、Pppara欠損マウスの皮質ではそのような増加はみられなかった。in silicoドッキングモデルによって予測され、培養マウスアストロサイトにおいて質量分析に基づくプルダウン法、時間分解蛍光共鳴法、部位特異的変異導入での検討によって確認されたように、スタチンは、PPARαのリガンド結合ドメインの2つのアミノ酸に結合し、この相互作用が、シンバスタチン誘導性のBDNFおよびNT-3存在量増加に必要であった。BDNFおよびNT-3をコードするNTF3のプロモーターにはPPREが存在しなかった。しかし、いずれもcAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)応答エレメント(CRE)配列を有し、CREBのプロモーターにPPRE配列が存在した。したがってスタチンは、培養下の野生型ミクログリアおよびアストロサイトと、野生型マウスの皮質において、PPARαのCREBプロモーターへの動員を誘導し、それによってCREBの発現を誘導したが、培養下のPpara欠損ミクログリアおよびアストロサイトと、Ppara欠損マウスの皮質では、そのような作用を及ぼさなかった。培養マウスアストロサイトにおいてCREBをノックダウンすると、シンバスタチンによるBDNFおよびNT-3の増加が抑制された。シンバスタチンは、野生型マウスとアルツハイマー病トランスジェニックマウスモデルの両方において、迷路行動に関連する記憶を改善したが、PPARαを欠損したマウスではそのような改善がみられなかった。これらの結果は、スタチンの新たな作用機序を明らかにしており、これらの薬剤が、アルツハイマー病患者の記憶の改善に役立つ可能性を示唆している。

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2015年8月11日号

Editor's Choice

薬理学
スタチンをアルツハイマー病に振り向ける

Research Article

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