• ホーム
  • がん 脳腫瘍へのチャネルを開く

がん
脳腫瘍へのチャネルを開く

CANCER
Channeling brain cancer

Editor's Choice

Sci. Signal. 01 Sep 2015:
Vol. 8, Issue 392, pp. ec245
DOI: 10.1126/scisignal.aad3213

Leslie K. Ferrarelli

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

X. Huang, Y. He, A. M. Dubuc, R. Hashizume, W. Zhang, J. Reimand, H. Yang, T. A. Wang, S. J. Stehbens, S. Younger, S. Barshow, S. Zhu, M. K. Cooper, J. Peacock, V. Ramaswamy, L. Garzia, X. Wu, M. Remke, C. M. Forester, C. C. Kim, W. A. Weiss, C. D. James, M. A. Shuman, G. D. Bader, S. Mueller, M. D. Taylor, Y. N. Jan, L. Y. Jan, EAG2 potassium channel with evolutionarily conserved function as a brain tumor target. Nat. Neurosci. 18, 1236–1246 (2015). [PubMed]

髄芽腫はよくみられる小児脳腫瘍であるが、治療選択肢が少ない。Huangらは、臨床的に承認された、カリウムイオンチャネルEAG2を阻害する抗精神病薬が、髄芽腫の増殖と進行を遅延させる可能性があることを見出した。髄芽腫患者組織の転写物解析により、転移性病変ではEAG2発現がより大きく、原発巣のあるサブタイプではKCNT2発現が低下していることが明らかになった。ヒト髄芽腫細胞株のトランスクリプトームプロファイルのパスウェイ解析では、EAG2の喪失が、キナーゼシグナル伝達、有糸分裂細胞周期、細胞生存の障害に関連することが明らかになった。EAG2をノックダウンした細胞では、細胞内ナトリウムおよび塩素イオンによって活性化されるカリウムチャネルKCNT2の存在量が少なかった。KCNT2をノックダウンまたは薬理学的に阻害すると、腫瘍の増殖が遅延し、ヒト髄芽腫移植担癌マウスの生存が延長した。髄芽腫またはCOS7細胞におけるEAG2およびKCNT2発現の操作によって、EAG2とKCNT2は、細胞周期の異なる段階で細胞容積を減少させ、有糸分裂の進行と細胞形態の変化を可能にしていることが明らかになった。マウスに移植する前のヒト髄芽腫細胞においてEAG2をノックダウンすると、播種と転移が阻止された。EAG2存在量は遊走細胞の後縁において豊富で、EAG2をノックダウン、または抗ヒスタミン薬アステミゾール(astemizole)により薬理学的に阻害すると、細胞運動が低下し、極性化と後縁収縮が阻害された。薬剤スクリーニングにより、著者らは、臨床的に承認された抗精神病薬チオリダジン(thioridazine)が、培養下の髄芽腫細胞の増殖と遊走を減少させることを見出した。樹立された髄芽腫細胞株に由来する、EAG2の存在量が高い脳腫瘍を移植した担癌マウスにおいて、チオリダジンを腹腔内注射すると、原発巣の退縮が誘導され、転移が阻止された。広範囲の転移性髄芽腫を有し、緩和的化学療法を受けている患者に、チオリダジンを投与すると、EAG2存在量が高い腸骨病変の退縮が誘導された。心臓への有害な作用は認められなかったが、チオリダジンを長期投与した場合には、重度の情緒不安定と抑うつが誘発され、治療の中止が必要となった。したがって、チオリダジンを髄芽腫に振り向けることで、この腫瘍は有効に治療されるが、患者のQOLを損なうことなく腫瘍を治療するためには、EAG2を標的とする薬剤のさらなる開発が必要である。

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

2015年9月1日号

Editor's Choice

がん
脳腫瘍へのチャネルを開く

Research Article

E3リガーゼAPC/CCdh1はユビキチン化を介したPAX3のタンパク質分解を促進し、メラノサイトの増殖とメラノーマの成長を抑制する

アダプタータンパク質TRAF3はインターロイキン-6受容体シグナル伝達を阻害し、形質細胞の発生を制限する

チロシンニトロ化によるPYR/PYL/RCAR ABA受容体の不活性化が植物の一酸化窒素によるABAシグナル伝達の迅速な抑制を可能にしている可能性がある

Perspectives

PTENおよびLKB1ダブルノックアウトマウスにおいてがんを媒介するシグナル伝達経路を細かく分析する

最新のEditor's Choice記事

2018年5月1日号

小胞体ストレスががんを阻害するとき

2018年4月24日号

新たなつながり:ユーイング肉腫の「ドライバー」がそのアキレス腱である

2018年4月17日号

PD-1シグナル伝達を再検討する

2018年4月10日号

新たなつながり:単純なシグナル伝達系の複雑性

2018年4月3日号

新たなつながり:サイトカインは共有することを学ぶ