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チロシンニトロ化によるPYR/PYL/RCAR ABA受容体の不活性化が植物の一酸化窒素によるABAシグナル伝達の迅速な抑制を可能にしている可能性がある

Inactivation of PYR/PYL/RCAR ABA receptors by tyrosine nitration may enable rapid inhibition of ABA signaling by nitric oxide in plants

Research Article

Sci. Signal. 01 Sep 2015:
Vol. 8, Issue 392, pp. ra89
DOI: 10.1126/scisignal.aaa7981

Mari-Cruz Castillo,* Jorge Lozano-Juste,*† Miguel González-Guzmán, Lesia Rodriguez, Pedro L. Rodriguez, José León

Instituto de Biología Moleculary Celular de Plantas (Consejo Superior de Investigaciones Científicas-Universidad Politécnica de Valencia), CPI Edificio 8E, Avda. Ingeniero Fausto Elio s/n, 46022 Valencia, Spain.

* These authors contributed equally to this work.

† Present address: Department of Botany and Plant Sciences, Center for Plant Cell Biology, and Institute for Integrative Genome Biology, University of California, Riverside, Riverside, CA 92521, USA.

‡ Corresponding author. E-mail: jleon@ibmcp.upv.es

要約 アブシジン酸(ABA)は、植物の成長を抑制し、ストレスへの順応を促進する植物ホルモンである。ABAの感知とシグナル伝達は、ABA受容体ファミリーであるPYR/PYL/RCAR(pyrabactin resistance1/PYR1-like/regulatory components of ABA receptors)へのABAの結合と、その後の、クレードAに属するプロテインホスファターゼ2C(PP2C)の抑制、SnRK2ファミリーに属するプロテインキナーゼによるイオンチャネルと転写因子のリン酸化に依存する。一酸化窒素(NO)欠乏状態の植物はABAへの感受性が高いことから、NOはABAシグナル伝達を抑制する可能性がある。NOによる制御には、タンパク質の翻訳後修飾が関与していることが多い。植物において過剰発現させたABA受容体とin vitroで改変した組換え受容体の質量分析では、受容体のチロシン残基のニトロ化とシステイン残基のS-ニトロシル化が明らかになった。ABAによってPP2C抑制を誘導するin vitroアッセイでは、チロシンのニトロ化によって受容体の活性は低下したが、S-ニトロシル化された受容体はABAに誘導されてホスファターゼを抑制させる能力を完全に保っていた。チロシンのニトロ化は共有結合による不可逆的な修飾であり、チロシンをニトロ化されたPYR/PYL/RCARタンパク質は、ポリユビキチン化され、プロテアソームによって分解された。われわれは、NOとスーパーオキシドアニオンを必要とするチロシンのニトロ化を、NOと活性酸素種の両方が産生される条件下でNOによってABAシグナル伝達を迅速に制限する機構として提唱する。

Citation: M.-C. Castillo, J. Lozano-Juste, M. González-Guzmán, L. Rodriguez, P. L. Rodriguez, J. León, Inactivation of PYR/PYL/RCAR ABA receptors by tyrosine nitration may enable rapid inhibition of ABA signaling by nitric oxide in plants. Sci. Signal. 8, ra89 (2015).

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