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がん
好中球が手術によって誘発される腫瘍形成を仲介する

CANCER
Neutrophils mediate surgery-induced cancer formation

Editor's Choice

Sci. Signal. 15 Sep 2015:
Vol. 8, Issue 394, pp. ec261
DOI: 10.1126/scisignal.aad4082

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

N. Antonio, M. L. Bønnelykke-Behrndtz, L. Chloe Ward, J. Collin, I. J. Christensen, T. Steiniche, H. Schmidt, Y. Feng, P. Martin, The wound inflammatory response exacerbates growth of pre-neoplastic cells and progression to cancer. EMBO J. 34, 2219-2236 (2015).[PubMed]

S. K. Wculek, I. Malanchi, Neutrophils fan cancer's flames. EMBO J. 34, 2211-2212 (2015).[PubMed]

炎症と創傷はいずれも、がんの発症と再発に関連する(WculekとMalanchi参照)。このことは、生検や腫瘍切除術を受ける患者にとって臨床的に重要な意味をもつ可能性がある。Antonioらは、ゼブラフィッシュモデルを用いて、創傷が近傍の前がん性細胞に与える影響を調べた。このトランスジェニックフィッシュモデルは、好中球では蛍光タンパク質dsRedが発現され、メラノサイトでは発がん性小分子GTPase Rasに緑色蛍光タンパク質を融合させたRasG12VeGFPが発現される。創傷のない対照に比べて、レーザーの反復照射によって尾びれに創傷を与えると、メラノーマの発症が尾びれで特異的に促進された。このとき、メラノーマの近傍に好中球はあまり存在しなかったが、メラノーマの部分的切除術を行うと、残された腫瘍組織に好中球が蓄積された。腹側表皮に作られた創傷のライブイメージングでは、予測どおり、好中球が創傷部に動員されることが示されたが、その後、創傷部から近傍のRasG12eGFPを発現する(前がん性)細胞へと移動することも明らかになった。対照的に、前がん性細胞が近傍にない場合には、好中球は創傷部に残存した。創傷のないフィッシュでも、前がん性細胞には好中球がいくらか存在したが、創傷を受けたフィッシュの前がん性細胞には、さらに多くの好中球が存在していた。好中球の動員は前がん性細胞の増殖亢進と相関を示し、免疫細胞の分化を妨げると創傷部近傍の前がん性細胞の増殖は減少した。好中球とマクロファージはプロスタグランジンE2(PGE2)を放出し、PGE2は形質転換細胞の増殖を刺激する。PGE2生合成酵素Cox-2の阻害薬を水中に添加すると、創傷部近傍の前がん性細胞は、Cox-2阻害薬で処理されていない創傷のない対照幼魚の前がん性細胞と同程度の増殖を呈した。合成PGE2を創傷部に添加すると、免疫細胞を枯渇させたフィッシュの前がん性細胞の増殖が刺激された。これらの結果は、好中球によって分泌される栄養因子が腫瘍形成の促進に別の形で関与している可能性を除外しないが、腫瘍切除術の前後に、アスピリンなど、PGE2合成を阻害する非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を投与すれば、創傷部近傍の前がん性細胞が刺激されて生じる腫瘍の再発率を低下させる助けになるかもしれないことを示唆している。

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2015年9月15日号

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