免疫学
核に適応する

IMMUNOLOGY
Adapting to the nucleus

Editor's Choice

Sci. Signal. 22 Sep 2015:
Vol. 8, Issue 395, pp. ec269
DOI: 10.1126/scisignal.aad4850

John F. Foley

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

H. Liu, H. Schneider, A. Recino, C. Richardson, M. W. Goldberg, C. E. Rudd, The immune adaptor SLP-76 binds to SUMO-RANGAP1 at nuclear pore complex filaments to regulate nuclear import of transcription factors in T cells. Mol. Cell 59, 840-849 (2015). [PubMed]

T細胞受容体(TCR)に抗原が結合すると、細胞膜の細胞内面でキナーゼやアダプタータンパク質などのシグナル伝達成分の集積が刺激され、T細胞が活性化される。アダプタータンパク質SLP-76[76 kDのSrcホモロジー2(SH2)ドメイン含有白血球タンパク質]は、ホスホリパーゼCγ1の活性化とCa2+の動員に必要である。このため、SLP-76欠損T細胞には、活性化の障害が認められる。Liuらは、SLP-76が、核でのT細胞活性化に第2の関与をすることを見出した。共焦点顕微鏡法では、マウスT細胞のTCR刺激によって、SLP-76と、SUMO化型のグアニンヌクレオチドトリホスファターゼ(GTPase)活性化タンパク質RanGAP1が、核膜孔複合体の細胞質フィラメントに共局在するようになることが示された。RanGAP1とGTPase Ranの両方が、サイトゾルから核内へのタンパク質の輸送には必要である。免疫共沈降実験では、SLP-76とRanGAP1の最大の結合が、TCR刺激の10〜20分後に発生することが示された。変異原性試験では、SLP-76のN末端領域における56番目リジンのグルタミン酸への変異(K56E)によって、RanGAP1との相互作用が阻害されるが、細胞膜でのTCRシグナル伝達事象には影響がないことが示された。転写因子NFATc1およびNF-κBは、T細胞活性化に重要なタンパク質を作る遺伝子の発現に必要である。野生型SLP-76を過剰発現するSLP-76欠損J14 T細胞にTCR刺激を加えると、蛍光標識型のNFATc1およびNF-κBの効率的な核移行が起こったのに対し、SLP-76 K56Eを発現するJ14細胞にTCR刺激を加えた場合には、両転写因子の核内への輸送が障害された。最後に、野生型またはK56E SLP-76を過剰発現するT細胞をマウスに注射し、抗原に曝露して、マウスから回収した後、in vitroで抗原により再度刺激すると、K56E SLP-76発現細胞において増殖応答の欠損が認められた。これらのデータを総合すると、SLP-76は、細胞膜でのTCR近位シグナル伝達を仲介するだけでなく、重要な転写因子の核内への輸送を促進することによって、T細胞活性化にさらに関与することが示唆される。

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