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免疫学
インターフェロンを妨げる
IMMUNOLOGY
Interfering with interferons
Sci. Signal. 16 Feb 2016:
Vol. 9, Issue 415, pp. ec30
DOI: 10.1126/scisignal.aaf4271
John F. Foley
Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA
J. R. Teijaro, S. Studer, N. Leaf, W. B. Kiosses, N. Nguyen, K. Matsuki, H. Negishi, T. Taniguchi, M. B. A. Oldstone, H. Rosen, S1PR1-mediated IFNAR1 degradation modulates plasmacytoid dendritic cell interferon-α autoamplification. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 113, 1351-1356 (2016). [PubMed]
I型インターフェロン(IFN)は、大半が形質細胞様樹状細胞(pDC)によって産生され、ウイルスに対する免疫応答にきわめて重要であるが、自己免疫疾患やウイルス性および細菌性病因にも関与する。Teijaroらは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の一種であるスフィンゴシン1-リン酸受容体1(S1PR1)の選択的アゴニストが、宿主防御を妨げることなく、免疫病態を抑制することに注目し、その基礎にある機構を検討した。マウス肺pDCを選択的S1PR1アゴニストCYM-5442で処理すると、in vitroで、インフルエンザウイルスに応答したIFN-α産生が抑制された一方、S1PR1アンタゴニストW146で処理した場合には、反対の作用が認められた。初期エンドソームに輸送されToll様受容体9(TLR9)を刺激する、CpGオリゴヌクレオチドに応答した、pDCのIFN-α産生も、CYM-5442によって抑制された。百日咳毒素を用いて、S1PR1を介するGi/oタンパク質活性化を妨げても、インフルエンザウイルスまたはCpGオリゴヌクレオチドに曝露したpDCのIFN-α産生に対する、CYM-5442の抑制作用は阻害されなかった。I型IFN受容体IFNARがなければ、pDCはIFN-α産生を増幅することができず、予想通り、IFNAR欠損pDCでは、野生型pDCと比べて、CpGオリゴヌクレオチドに応答したIFN-α産生が少なかった。しかし、IFNAR欠損pDCに対し、CYM-5442はそれ以上の抑制作用を示さなかったことから、S1PR1シグナル伝達は、IFN-αの初期産生ではなく、I型IFNシグナル伝達の自己分泌型増幅を阻止することが示唆された。ウエスタンブロット解析によって、CYM-5442で処理した野生型pDCでは、W146で処理したpDCと比べて、IFNAR存在量が減少していることが示された。CYM-5442の存在下でIFN-αによってpDCを刺激すると、W146で処理したpDCをIFN-αによって刺激した場合と比較して、IFNARエフェクターSTAT1のリン酸化が低下した。免疫蛍光共焦点顕微鏡法により、W146で処理したpDCではS1PR1とIFNARが細胞膜に共局在する一方、CYM-5442への応答ではリソソームに共局在することが明らかになった。溶媒投与マウスと比較して、S1PR1アンタゴニストを投与し、CpGオリゴヌクレオチドに曝露したマウスでは、血清IFN-α量が増加していた。これらのデータを総合すると、S1PR1アゴニストは、IFNARの内部移行と分解を促進することによって、IFN-αシグナル伝達の増幅とそれに伴う免疫病態を防ぐことが示唆される。