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アストロサイトがミトコンドリアを提供する

Astrocytes donate mitochondria

Editor's Choice

Sci. Signal. 02 Aug 2016:
Vol. 9, Issue 439, pp. ec174
DOI: 10.1126/scisignal.aah6674

Annalisa M. VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

K. Hayakawa, E. Esposito, X. Wang, Y. Terasaki, Y. Liu, C. Xing, X. Ji, E. H. Lo, Transfer of mitochondria from astrocytes to neurons after stroke. Nature 535, 551-555 (2016). [PubMed]

要約

アストロサイトは、ニューロンへの栄養支援、修復の促進など、中枢神経で多くの機能を遂行するグリア細胞である。また、ニューロンを酸化ストレスから保護する一助となり、ニューロンから放出された損傷ミトコンドリアを取り込んで分解することもできる。Hayakawaらは、培養ラット皮質アストロサイトがミトコンドリアの断片を培地中に放出し、その断片を培養ラット皮質ニューロンが取り込むことを見出した。培養ニューロンから酸素とグルコースを奪うと、細胞内のアデノシン5'三リン酸(ATP)濃度と細胞生存率の両方が低下した。アストロサイト培地上清を酸素およびグルコースを除去したニューロンに追加すると、ATPの蓄積が回復し、生存率が改善したが、培地からミトコンドリア断片を枯渇させた場合や、ミトコンドリアのクエン酸回路の薬理学的阻害薬で処理した場合には、そのような回復と改善は認められなかった。これらの効果には、アストロサイト中のCD38が必要であった。CD38は、カルシウム動員セカンドメッセンジャー・サイクリックADPリボース(cADPR)を合成するミトコンドリアの酵素であり、cADPRでアストロサイトを刺激すると、ミトコンドリアの放出が増加した。脳卒中を模倣するために一過性局所脳虚血後にアストロサイト由来のミトコンドリア断片をマウスの大脳皮質に注入すると、ミトコンドリア断片はニューロンに取り込まれた。同様に、アストロサイトを蛍光標識したトランスジェニックマウスで脳虚血を起こさせると、虚血性損傷部の周辺のニューロンで蛍光標識されたミトコンドリアの出現が誘導された。これらのニューロンでは、ミトコンドリアのマーカー量が増加し、細胞生存因子の活性化が促進された。CD38の量は局所脳虚血に晒されたマウスの皮質で増加し、CD38をRNA干渉でサイレンシングすると、ニューロン内のミトコンドリアの数が減少し、神経突起伸長のマーカー量が減少し、脳卒中後の神経学的症状が増悪した。アストロサイトによって放出されたミトコンドリアがニューロンに侵入する方法は確認されなかったが、これらの知見は、ニューロンの虚血からの回復を助けるミトコンドリアを放出することによってアストロサイトがニューロンを支援している可能性を示している。

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2016年8月2日号

Editor's Choice

アストロサイトがミトコンドリアを提供する

Research Article

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低分子ヘテロ二量体パートナーSHPはアストロサイト特異的に肝臓X受容体(LXR)のSUMO化を促進することにより炎症性シグナル伝達のLXR依存的抑制を媒介する

Research Resources

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