危険な糖シグナル

Dangerous sugar signals

Editor's Choice

Sci. Signal. 09 Aug 2016:
Vol. 9, Issue 440, pp. ec179
DOI: 10.1126/scisignal.aai7399

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

A. J. Wolf, C. N. Reyes, W. Liang, C. Becker, K. Shimada, M. L. Wheeler, H. C. Cho, N. I. Popescu, K. M. Coggeshall, M. Arditi, D. M. Underhill, Hexokinase is an innate immune receptor for the detection of bacterial peptidoglycan. Cell 166, 624–636 (2016). [PubMed]

要約  NLRP3インフラマソームは、ペプチドグリカンなどの微生物成分や、危険信号として作用する低分子による、マクロファージおよび樹状細胞のパターン認識受容体の活性化に応答して、炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)–1βとIL-18を産生する。ペプチドグリカンは、グラム陽性菌の細胞壁の一部を成す多糖であり、その主鎖はN-アセチルムラミン酸(NAM)とN-アセチルグルコサミン(NAG)の2つの糖で構成される。Wolf らは、これらの糖をマクロファージの細胞質に送達すると、IL-1βの産生がNAGによって増加するが、NAMによっては増加しないことを見出した。著者らは、NAGが解糖系酵素ヘキソキナーゼを阻害するという過去の報告を確認した。IL-1β産生増加とヘキソキナーゼ阻害のいずれにも、NAGのアセチル化が必要であった。ヘキソキナーゼと電位依存性陰イオンチャネル(VDAC)の相互作用によって、酵素がミトコンドリア外膜に係留され、この相互作用は、シグナル伝達経路またはその最終産物であるグルコース-6-リン酸によるフィードバック阻害の影響を受ける。ペプチドグリカンまたはNAGで処理したマクロファージでは、内在性またはGFP標識ヘキソキナーゼの細胞質プールが増加したが、NAMで処理したマクロファージではそのような増加は認められなかった。これらの結果から、NAGは、ヘキソキナーゼとVDACの相互作用を妨害し、この相互作用の途絶によって、NLRP3インフラマソームが活性化される可能性があることが示唆された。実際に、ヘキソキナーゼとVDACの結合を妨害するペプチドをマクロファージに送達すると、NLRP3インフラマソームが活性化されたことが、IL-1βおよびIL-18分泌の増加などのさまざまな指標によって判断された。このペプチドをマウスに腹腔内注射すると、腹腔内への好中球浸潤が誘発された。さらに、グルコース-6-リン酸をマクロファージの細胞質に送達すると、IL-1β分泌が増加し、ヘキソキナーゼがミトコンドリアから解離した。また、IL-1β分泌の増加は、グルコース-6-リン酸を蓄積させる操作によって模倣された。このように、ヘキソキナーゼは、ペプチドグリカンと多量のグルコース-6-リン酸の両方のパターン認識受容体として作用することから、代謝攪乱に対する炎症性免疫応答を仲介する可能性が示唆される。

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