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ウォーミングアップのためのシグナル

A signal to warm up to

Editor's Choice

Sci. Signal. 23 Aug 2016:
Vol. 9, Issue 442, pp. ec190
DOI: 10.1126/scisignal.aai8444

Wei Wong

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

J. I. Odegaard, M.-W. Lee, Y. Sogawa, A. M. Bertholet, R. M. Locksley, D. E. Weinberg, Y. Kirichok, R. C. Deo, A. Chawla, Perinatal licensing of thermogenesis by IL-33 and ST2. Cell 166, 841–854 (2016). [PubMed]

D. Mathis, IL-33, imprimatur of adipocyte thermogenesis. Cell 166, 794–795 (2016). [PubMed]

要約  褐色脂肪組織は、体温を維持するために、脱共役タンパク質1(UCP1)に媒介される脱共役ミトコンドリア呼吸によってエネルギーを燃焼し、熱を産生する(この過程を熱産生という)。白色脂肪組織は、通常はエネルギーを蓄積するが、寒冷曝露やアドレナリン刺激などの多様な刺激を受けると、ベージュ脂肪組織を形成する。「褐変」と呼ばれるこの過程で、白色脂肪細胞はUcp1発現の誘導をはじめとする褐色脂肪細胞の特徴の一部を呈する。この過程は、ストレスや損傷に応答してさまざまな細胞種から放出され2型自然リンパ球(ILC2)を活性化させるサイトカインであるインターロイキン33(IL-33)によって、成体マウスで誘導可能である。Odegaardら(Mathisも参照)は、周産期にベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞を共役呼吸から脱共役呼吸へと切り替えるには、IL-33とその受容体のST2が必要であることを見出した。生後8週の野生型マウスの鼠径部白色脂肪組織では、寒冷曝露に応答してUCP1の存在量と熱産生が増加したが、Il33–/–マウスでは増加しなかった。しかし、ベージュ脂肪細胞の形成は、Il33–/–マウスで減少していなかった。野生型マウスの場合と比べて、Il33–/–マウスでは、ノルエピネフリン刺激による酸素消費量の増加の程度がより小さかったことから、褐色脂肪の熱産生の欠損が示唆された。白色脂肪と褐色脂肪の両方で熱産生能が低下していることと一致して、生後8.5週(未満)のIl33–/–マウスでは、寒冷曝露の生存数が減少した。Ex vivo解析では、ベージュ脂肪組織と同様に、Il33–/–マウス由来の褐色脂肪組織にUCP1タンパク質は存在せず、酸素消費量も野生型マウスより少なかった。Ucp1 mRNAは、Il33–/–マウス由来の褐色脂肪組織に存在したが、スプライシングパターンが野生型マウスとは異なっていた。これらのmRNAには、B型とC型という2つのバリアントが含まれていた。この2つのバリアントではエクソン4とエクソン5の間にある潜在的なスプライスジャンクションが使用されており、C型は野生型マウスにも存在する。しかし、Il33–/–マウスには、エクソン4とエクソン5の間にある通常のスプライスジャンクションを使用した、野生型マウスのUcp1 mRNAの大部分を含む構成のスプライスバリアントAは存在しなかった。Il1rl1–/–マウス(Ilrl1はST2をコードする)のベージュ脂肪と褐色脂肪にはUCP1が含まれなかったことから、共役呼吸から脱共役呼吸への切り替えにはST2が必要である。また、寒冷曝露は生後4.5週のIl1rl1–/–マウスにとって致死的であった。ILC2や、免疫細胞のST2の下流にあるアダプタータンパク質のMyD88は、共役呼吸から脱共役呼吸への切り替えに必要なかったことから、IL-33とST2がまだ確認されていない経路を介して切り替えを媒介していることが示唆された。このように、IL-33とその受容体ST2は、Ucp1 mRNAのスプライシングの変化を通じて共役呼吸から脱共役呼吸への切り替えを出生後に誘導することによって、ベージュ脂肪細胞と褐色脂肪細胞が熱産生組織として機能することを可能にしている。

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